ドヴォルザークの交響曲第8番の第3楽章第1主題もそんな一つです…。
高校時代にFM放送で初めて聴いた時、ノスタルジーに溢れたこの旋律の虜になってしまいました。
ただ演奏者が誰だったのかは、全く見当がつかないままに…。
この頃は、自分なりに指揮者のランク付けをしていました。
1位:フルトヴェングラー、2位:トスカニーニ、3位:ワルター……。
どんな曲でも、フルトヴェングラーの手にかかると、最も素晴らしい演奏となる!そんな稚拙なランク付けです。
ですからランクにすら入らない指揮者は、端から二流・三流以下扱い。
「無名の指揮者が振ってもこんない素晴らしいのだから、より偉大な指揮者が振れば、もっと素晴らしい演奏になる筈」
そう考えたために、演奏者に無関心だったのだろうと、長年思っていました。
しかしながらこの感動は忘れ難く、その後実演も含めて様々な演奏を聴きましたが、この時に匹敵するような感動を受けたことはありませんでした。
勿体ぶって書いてきましたが、この演奏、1958年にルーマニア生まれの指揮者コンスタンティン・シルヴェストリがウィーン・フィルを指揮したものに、十中八九間違いないと思います。
10年ほど前に、シルヴェストリのボックスセットに収録されていた演奏を聴いた時、そう確信しました。
第3楽章冒頭から、思い入れたっぷりの表情で演奏された演奏を聴いた時、「ああ、これだ!」と思いましたが、
それが確信になったのが、金管楽器がパッパラパッパラと鳴り響くように聞こえる第4楽章。
「何と安っぽい演奏!」当時高校生だった私がそう感じ、感覚的にこの演奏を拒絶したことが、記憶の底から甦ってきたのです。
不思議なもので、演奏者がほぼ判明して心の蟠りが無くなったせいでしょうか、この曲の様々な演奏の良さを受け容れ、楽しめるようになりました。
それでも、シルヴェストリの演奏は、一度お聴きになることをお薦めしたいのです。
勿論第3楽第1主題の思い入れが込められた歌い回しですが、
特に中間部が終わって、再びこの主題が演奏される部分…。
今も涙なくしては聴けない、思い入れの深い演奏なのです!