想い出の演奏(14)

ー現代音楽に初めて感動した演奏ー

ストラヴィンスキー:バレー音楽『春の祭典』

ブーレーズ指揮  クリーヴランド管弦楽団


1913年のパリ・シャンゼリゼ劇場での初演時には、

当時の常識では考えられない不協和音・変拍子・複調・無調が入り混じった複雑な音楽や斬新なバレーの振付けに、

野次・罵声が飛び交う中、しばしばの中断をはさんで、ようやく最後までたどり着いたとか…。

高校・大学時代から、20世紀音楽の最高傑作と言われたこのセンセーショナルな曲を理解したいと思い、

初演時の指揮者だったモントウ盤、

DECCAの優秀録音で知られたアンセルメ盤、

当時最高の演奏との誉れ高かったマルケビッチ盤等を聴きましたが、

正直なところ、うるさいだけの訳の分からない音楽でした。

しかし、ブーレーズ/クリーヴランド管弦楽団(1969年録音)による演奏を初めて聴いた時には、

曲の進行は分かり易いし、

迫力は桁違いに凄いし、

リズムは面白いし、

手に汗を握りながら、最後まで集中して聴いてしまいました。

それまで聴いた指揮者の演奏云々よりも、ブーレーズという人は、こんな複雑な曲を完全に掌握し、表現することのできる、頭抜けた才能の持ち主なんだと、心底思ったものでした。

レコード界に『ハルサイ』ブームが起こったのは、このブーレーズ盤がきっかけだったように記憶しているのですが…。

アナログ録音の成熟期とあいまって、多くの指揮者がこの曲をレコーディングし、『レコード藝術誌』の月評では、殆んどの新譜が推薦盤に推されることによって、我が国での古典音楽としての地位を確保したように思います。

数年前に発売され高い評価を得たゲルギエフ盤を始めとして、素晴らしい録音と演奏に恵まれた曲だと思います。

でも最近は、昔は碌に聴くことさえできなかったモントウ、マルケヴィッチ盤などは、一体どんな演奏だったのか、そんなことの方に興味が湧いてきています。