放 浪 記 (140)

庭にタヌキが!

2016.3.14


雪のち曇天の午後、いつものように気持ちよく音楽を聴いていると…。

愛犬ソラの、落葉松林に響き渡る“ウォンウォン”という、ドスの効いた鳴き声と、

サクラの“キャンキャンキャン”という甲高い声が!

ソラの声だけでしたら、「またか!」と放っておくのですが、

度胸が座っていて、慌てず騒がずのサクラがこんなに吠え続けるということは、余程の一大事か!

音楽を鳴らしっぱなしにしたまま急いで庭へ出てみると、二匹がフェンス際へ黒と茶の混じった小動物を追い詰め、しきりに威嚇しています。

近づいてみると…、なんとタヌキです!

間近にこんな光景を見るのは初めてのことでしたが、

犬と戦う武器を備えていないのか、

怯えながらも時折歯を剥き出して必死に威嚇を試みているのですが、凄みは全く感じられず、

怖がり屋のソラでさえ、一向にひるむ様子はありません。

ソラは吠えて威嚇しているだけなのですが、サクラは隙を見て突っかかっていき、押さえ込もうとしています。

あまりにタヌキが可哀そうで、慌てて二匹にリードを付けて引き離し、とりあえず家の中に閉じ込めました。

その間、可哀そうなタヌキは逃げ口を探してフェンス沿いをうろうろしています…。

思いがけず、犬たちの急襲に遭ったために気が動転して、侵入経路が分からなくなったのでしょう…。

私が近づいていくと、観念したようにフェンスの角に座り込み、こちらをじっと見つめているのですが、

その訴えるような瞳の、つぶらで可愛いこと!

すっかり、タヌキのファンになってしまいました…。


そうはいっても、家で飼うわけにもいきませんので、

庭から出すために、ロープで輪を作って首にひっかけようとしました。

いくら可愛いと言っても、病気も含めて、野生動物を警戒する気持ちが強く、

安易に触ることは避けたい、との思いからです。

ロープでひっかけようと近づくと、力なく歯を剥いて“ウーッ”と一応威嚇しますが、攻撃する様子は全くありません…。

数度繰り返すうちに、こちらの意図が理解できたのか(?)、或は観念したのか(?)、抵抗する気力もなくなってしまったよう…。

ようやくロープが首にかかりましたので、ソロソロと出口へ引っ張っていき、駐車場で放したのですが…。

一目散に逃げていくだろうと思っていたのですが、

余程ダメージが大きかったのか、力なくよたよたとしながら、森の中へと消えていきます。

「犬たちに噛まれて、怪我でもしたのだろうか」と気がかりになり、

ピッキオに相談して、何らかの対処をした方が良かったと、後悔することしきりです。

そこで、犬たちを引き離してからタヌキが辿った後を調べてみましたが、

幸い雪上に血痕は見つからず、危害を加えたのではないことが分かり、とりあえずホッとしました…。


最近、犬たちが出ないようにフェンスで囲んでいる我が家の庭に、野生動物が侵入してくることが増えているようです。

昨年も八月の深夜、こともあろうに庭と屋内とを繋ぐ犬たちの出入口から、幼い子ギツネが室内に侵入し、大騒ぎになったことがありました。

その時も、サクラが第一線に立ってキツネをオーディオルームの隅に追い詰め、しきりに威嚇していましたが、ソラは外に向かって吠えるだけ…。

そのキツネは、朝の散歩でよく見かけた、幼い子ギツネだと思います。

生前の妻も、見かける度に「おおぃ!」とよく声をかけていましたし、

犬たちも攻撃的に吠えることもなかったので、

もしかしたら、お友達と思い込んで遊びに来たのかもしれません…。

ソラとサクラを繋いでサッシを開けると、すぐに庭に飛び出し、フェンスを軽々と飛び越えて逃げていきましたが…。

あとには強烈な動物臭が残され、様々な洗剤を使ってみましたが、

拭けども拭けども臭いは消えず、三週間余りにわたり悩まされ続けました。


我が家は、山麓の傾斜のある別荘地。

この13年間で、流れ込んだ土が10p程堆積したためにフェンスが低くなってきたのが、野生動物侵入の原因のようです。

あのタヌキがフェンスを乗り越えられるとは到底思えないにしても、そろそろ対策を施さなければ…!