放 浪 記 (137)

サントリー・ホール初訪問

2015.4.21


クラシック音楽聴取感想記のようなホームページを開始して6年が経過しました。

東京まで新幹線で僅か1時間強の軽井沢に住んでいますが、

コアなファンを自認する私が、今や日本のクラシック音楽の殿堂とも言えるサントリーホールに「一度も行ったことがない」と言うと、皆さん意外な顔をされます…。


理由は、元来が出不精な性質であることに加え、

東京を往復する旅費とチケット代が、年金生活の身には大きな負担としてのしかかること、

自然の中で生活していると、都会の人混みが息苦しく感じられ、不快な脂汗を流すようになったこと、

夜のコンサートだと、復路の最終の新幹線の時間を気にしなければならないこと、

加えて、近年はコンサートが開始される直前の、会場でのワクワク感や緊張感を体験できなくなったために、生で聴く楽しみが半減したこと…。

ならば、わざわざ会場まで足を運ばなくっても、我が家のオーディオで十分じゃないかということで、納得していたわけです…!


ところが思いがけずも、4月18日の小山実稚恵さんのデビュー30周年記念コンサートを聴くために、この殿堂を訪れる機会がやってきました。

実は妻が小山さんのファンで、この日のコンサートを楽しみにしていたのですが、風邪で体調がすぐれず、とても東京まで行けそうもない状態。

そのために、「せっかくのチケットがもったいない」ということで、

私が、楽しみ7割、邪魔くささ3割の心境で、出向くことになったわけです。


新幹線「はくたか」で軽井沢→東京が1時間強、山手線で新橋まで2駅、地下鉄銀座線で2駅、

山手線の乗り場や、地下鉄の入り口を探すのにもたつきましたが、

11:22に軽井沢駅を出発して、13:00前には無事ホール前のカラヤン広場に到着!

思っていたよりもすんなりと行き着くことができ、

年金生活者という身分をすっかり忘れて、「意外に近いんだ。これなら、いつでも来れるわ!」


大野和士指揮の東京都交響楽団の演奏で、1曲目がウェーバーの歌劇「オイリアンテ」序曲。

力強い第1主題が終わり、弦がアリアのような第2主題を奏で始めると、その響きの美しさに、ホール全体から感嘆のため息が…!

長い間体験することができなかった感動の共有に、思わず背筋が「ゾクッ」としました。

フガート部の洗練されていながら、且つ力強い演奏も、見事!


2曲目は、ショパンのピアノ協奏曲第2番。

チケットを入手した時期が遅かったため、座席はホール1階の最後列の一番端っこ、おまけに後部と側面から2階フォロアーが、頭上低く張り出しています。

そのためか、長い提示部が終了した後に鳴り響いたピアノの音は、オケに埋もれているように感じられましたが…。

そんな環境にもすぐに慣れて、音のバランスに違和感を覚えることもなく、秘められた情熱と穏やかなファンタジーを感じながら、楽しむことができました。


20分間の休憩を終えて席に着くと、2階席に多くのカメラマンの姿が…!

「どんなビップが聴きに来ているのだろう」と期待していると、

「おぉー」という声にならないどよめきと拍手が拡がり、二階席に美智子皇后さまのお姿が!

慎ましやかな喜びが、ホール内に染み渡っていくように感じられました。


3曲目は、ピアニストにとって難曲と言われる、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。

ラフマニノフ作品には、共通して「濃厚なロシアン・ロマン」という先入観を抱いていたのですが、

小山さんと大野/東京都交響楽団の演奏は、「爽やかなリリシズム」を感じさせるもの。

どちらかというと苦手だったラフマニノフ作品が、すんなりと心に染み入ってきます。

特に第2楽章後半部の、今までなんとなく聴いていたワルツに、素朴な農民舞曲を感じて聴き入ったことは、この曲の聴取歴にとって大きな収穫!

この長大な難曲を、ほとんどノーミスで、説得力豊かに一部の隙もなく弾き切った小山さんの力量に、聴衆が大歓声で応えたことは、至極当然のことでしょう。


バブル期の冠コンサートの招待客のおかげで、聴衆との一体感が希薄に感じられ、コンサートに魅力を感じなくなった私ですが、

軽井沢に来て初めて、というよりもほぼ20数年ぶりにホール内の聴衆と感動を共有でき、コンサート会場に臨席する悦びに浸ることができました。

この体験を妻に話したら、さぞかし己の健康管理の至らなさを悔やむだろうとおもいつつ、帰路についた次第です。