妻も、子供の頃にお稽古事でピアノを習っていたこともあって、大の音楽好き。
兄弟や親族、友人たちからは、「趣味が一緒で、さぞかし二人で仲良く音楽を聴きながら、優雅な生活を送っているのだろう」
よく、そう言われるのですが、とんでもないはなしで、
こちらに来て以降、特にここ4〜5年は、一緒に音楽を聴いたことなど、全く記憶にありません。
妻は、音楽を聴きながらあれこれと喋りたい性質なのですが、
私はいったんスピーカーの前に坐ると、ひたすら曲に没入するものですから、
話しかけられると、露骨に「うるさいなぁ!」という顔をするらしく…。
ですから最近の妻は、「あんたと違って、色々せんならんことがあるからね!」と憎まれ口を叩きながら、
家事の傍ら、もっぱらAM放送から流れてくる音楽を聴く程度…。
そんな妻が、最近ピアノの調律をしたことをきっかけに、
どうやら「せっかくだから、弾かなければ勿体ない!」という動機から、
再びピアノに取り組み始めました。
「ねえ、シューベルトの即興曲op.90の第2、3番と、ショパンのスケルツォ第2番、お薦めの演奏で聴かせてくれへん?曲の感じをつかみたいねん!」
久しぶりに、珍しいことを言い出しました。
なんでも1か月ほど前に、フリードリッヒ・グルダの弾くモーツァルトの最後のピアノソナタをラジオで聴いて、初めてこの曲の素晴らしさに目覚めたとのこと!
そんな体験から、聴き慣れたこれらの曲も、「目から鱗」の心境で、再挑戦したいようです。
例え妻であろうとも(?)、あてにされれば、悪い気はしません。
シューベルトの2曲は、ルプーの演奏を、
ショパンは、嘗て妻が好きだったアシュケナージと、私のお薦めのポリーニの演奏で!
「(シューベルトの)op.90-3方が、内容の深い曲やね!ルプーの自然な息づかいが素晴らしくって、ちょっと真似できへんと思うけど…。それに比べると、op.90-2の方は、それほどでもないのかな?」と、妻!
「いや、op.90-2も、演奏によっては、もっといいのもあるよ!」と言いたい気持をグッと抑えて…。
折角、機嫌よく結論付けているのに、こんなことで口論しても、仕方ありませんし…。
「ショパンは、ポリーニの演奏の方が、何というか…」と、妻!
「曲の格が、ワンランクもツーランクも上のような感じが、俺はするんやけど!」と、遠慮がちに私!
「ポリーニは、物凄く音階を大切に弾いている、という感じ…。とにかく、音がきれい!」
でも、あまりに凄い演奏を聴いたせいか、「スケルツォは、とても私には無理!」なんだそうです。
なにはともあれ、少しは妻の感性を刺激するお役には立てた様子…。
しばらくは、ピアノに熱中してくれると、私も心置きなくCD鑑賞に耽ることができるのですが…。