放 浪 記 (86)

北 の 国 か ら '87 初 恋

2012.1.25 


過日、再放送されていたTVドラマ『北の国から ‘87初恋編』を、久しぶりに観ました。

25年前、私が39歳の時に初めて放送されたものですが、その後何度か再放送され、『北の国から』のシリーズの中でも、観る度に強いインパクトを受け続けている作品。

ただ、その後いろいろな体験を積み重ねてきたせいか、感じ入ることが多く、今回ほど大泣きしたことはありません…!


翌春に卒業を控えた中学3年生の黒板純は、別な中学校に通う同い年の少女れいに偶々出会い、一目惚れするところから、物語は開始されます。

自分の気持ちを告白することなど、なかなかできない不器用な少年に、自らの青春のほろ苦い想い出を重ねて、懐かしく思われた方も、少なからずいらっしゃることでしょう!


そんな或る日、乗合バスの車窓から、自転車のトラブルで困っている彼女を見つけ、直近のバス停で下車した純。

「逃げるなよ。勇気を出して声をかけろ!」と、思わず励ましている自分に苦笑!


無事、外れたチェーンを元通りに直して、二人で帰宅する途中に雷雨に遭い、道端の小屋で雨宿りしながら、並んで暖をとる二人。

その時に純は、中学卒業後は東京に出て、働きながら定時制高校に通うという彼女の夢を知ります。

卒業後は、地元の高校に進学するつもりだった純でしたが、

れいの話を聞いて、彼女と同じ道を歩む決心を!

純の単純さ、計画性のない頼りなさに親近感を抱く自分に、またまた苦笑…。


しかし6年前に、不倫した妻と別れ、東京を捨てて、二人の子供とともに生まれ故郷の富良野に戻った父五郎が、

自分達兄妹を育てるために、物心両面での懸命の労苦を目の当たりにしてきた純には、

自分の希望が父の期待を裏切るような行為に思えて、話を切り出す決断がつきません。

思い悩みつつ、実の兄の様に慕う草太に、つい心の内を打ち明けてしまいます!


その話は、五郎の周囲の人々の知るところとなり、

他人から聞かされることによって、初めて純の気持を知った五郎は、酔った勢いで「そんな大切な話を、何故自分に相談してくれなかったのか」と、純を叱責!

純も、日ごろ鬱積していた父親への不満を、つい口に出してしまいます。

お互いを思いやりつつも、ちょっとしたボタンの掛け違いから生じた心の行き違い…。

このシーン、今は亡き父の存在を鬱陶しく思い続けていた思春期の自分の姿とダブってしまって、切なさに涙が止まりませんでした。


『北の国から』には、農業を生業とするために、苦労して原野を切り開いた人々にも、容赦なく襲いかかる過酷な運命が描かれています。

今回も、予想外の早霜警報が発令され、動顛したれいの父親は、霜害対策を施そうと、車を大急ぎでバックさせたために、誤って妻を轢いてしまいます。

妻を死なせてしまった上に、農作物に甚大な被害を被った父娘は、クリスマスイヴの日に、誰にも行き先を告げずに富良野を去り、純の初恋は終わります…。

失意に落ち込む純は、妹蛍が伝える父五郎からのクリスマスプレゼント(=東京での住まいの手配)にも、うわの空。

「お父さんがあんなに悩んで決めくれたのに、お兄ちゃんの決心って、れいちゃんの後を追うためだったの!」と、妹から叱責される純!


純の心の内を知ってか知らずか、五郎は「いつ、お前が帰ってきてもいいように、部屋もそのままにしておく!」と、純に伝えます。

母を亡くした息子に、母のような愛情を注ぐ父親と、

「そんな父親に、いつまでも甘えるな!」とばかりに、兄を叱責する妹!

家族の絆というものを考えさせられる、名場面だと思います。


東京への旅立ちの日、父の手配してくれた定期便トラックの助手席に同乗した純に、

運転手は、「お前の親父からもらったお金だ。ピン札に泥が付いている。俺は、そんな金を受け取るわけにはいかない。お前の一生の宝として、大事にしまっておけ!」

そう言って、2万円の入った封筒を差し出された純!

人と人との絆について深く考えさせられるドラマに、妻も私も終始無言のまま、ただ泣いていました。。