今回の指揮者は、1980年ベネズエラ生まれのグスターボ・ドゥダメル。
名前は見たり聞いたりはしていましたが、映像で姿を見るのも、演奏を聴くのも初めてのことです。
ラトヴィア生まれのメゾ・ソプラノ、エリーナ・ガランチャ(こちらも同様)を迎えて、
ベルリオーズ:
『ローマの謝肉祭』、『ファウストの劫罰』から「ロマンス」
サン=サーンス:
『サムソンとデリラ』より「バッカナール」「あなたの声に私の心は開く」
ビゼー:
『カルメン』より「前奏曲」「ロマの歌」他、
ファリャ:
『三角帽子』第2部、
以上のようにフランス・スペイン物のオンパレードで、アンコールも含めてドイツ物は一切演奏されませんでした。
ドゥダメルという指揮者の個性が明確に打ち出されたのであろうこのプログラム、
こんなに心から楽しめるコンサートを観・聴いたのは、久しぶりのこと!
毎年正月に、全世界に向けて生中継されている、オーケストラが主体となった対極的な某コンサートにマンネリ感を抱くようになった私には、大変に新鮮に映りました。
最近はメジャーオーケストラのコンサートともすっかりご無沙汰しており、新譜CDを買うことも殆どないために詳しくは知らないのですが、
ベルリン・フィルの評価が低下しているとか…?
ただ、このコンサートを聴いた範囲では、
ドゥダメルの緩急強弱を始めとして、即興的な意図を忠実に具現し得る世界トップクラスのヴィルトゥオーゾ・オーケストラであることに変わりはないと思えました。
がっちりと堅固な低音に支えられた、見事なバランスの弦楽器群もさることながら、
木管群の表情豊かで艶やかな音色には聴き惚れてしまいます。
指揮者とオケの関係もさることながら、
「ロマンス」での、愛する男性を待ちわびる不安な心境を歌うメゾに、同じ呼吸で寄り添うイングリッシュホルンの切々とした響きの美しさ!
ワクワク感という点では、緊張感をはらみつつ、ゆったりとしたテンポで開始される「ロマの歌」などは、
曲を知っている者にとっては、「どんなに凄まじいクレッシェンドが訪れるのか!」と、いやがうえにも期待が高まったり…
『三角帽子』の「終幕の踊り」では、コントラバス奏者が、身体全体でリズムをとりながら、弓を動かしていたり…。
今挙げたのは、ほんの一例に過ぎないもので、
こんない楽しく、しかも熱っぽい演奏が満載されたコンサートなら、
クラシックを敬遠する人を無理やり連れて行っても、きっと喜んでくれると思うのですが…。
でも映像を観ていると、演奏終了後も、仏頂面のままで拍手もしない人がいるのですから、ヒトの好みを一概に決めつけることはできませんね!