彼の経歴をWikipediaで見ると、「音楽は楽しむもの」との信念のもと、クラシック音楽を気楽に楽しめるように、そして観客自らも気軽に参加できるように、
さまざまな演出を試みながら指揮するスタイルのコンサートを、世界各国で開いているとか。
彼のコンサートを見るのは二度目ですが、難しいことは抜きにして、とにかく楽しい!
自身もヴァイオリンを弾きながら指揮する姿は、昔日のボスコフスキー/ウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートの映像を思い出しました。
彼の公演の定番になっているのが、どうやら『美しく青きドナウ』とショスタコーヴィッチの『セカンド・ワルツ』のようで、
これらの曲が始まると、場内に予め設けられたスペースが観客も飛び入りで参加できるダンスホールに変身し、聴衆も手慣れた様子で楽しんでいることが如実に伝わってきます。
TVでリューの演奏する『セカンド・ワルツ』の鄙びた哀愁を湛えたメロディーを初めて聴いた時、
子供の頃駅前で興行していたサーカスの音楽や、
場末の安物のキャバレーでダンスに興じる人々の姿に共通したうら悲しさと共通する、
そんな光景が、物凄く懐かしく思い出されたのです…。
ただ、TVで初めてこの曲を聴いた時は、表示を見逃したために、曲名が判りません。
懐かしい感慨を覚える曲が正体不明のままでは、気持が落ち着かないもので、
寝ても覚めても必死に記憶をたどりました…。
あれやこれやと心当たりのディスクを取り出して、結局曲名が判るまでには、1週間は要したと思います。
家に有ったCDの中から漸く見つけ出して、ショスタコーヴィッチのジャズ組曲第2番!その6曲目の「第2ワルツ」と判明しました。
私が所有していたディスクは、それ以前に2〜3度は聴いていたのですが、
リッカルド・シャイー/ロイヤル・コンセルトヘボウ管の演奏から受けた印象と、アンドレ・リューのからの印象が、余りに違いすぎたせいでした。
シャイーの演奏にも、前述したようなペーソスは控え目に漂っていますが、曲の素性を知った今も、リュウの演奏から得られる感慨は、全く湧いてきません。
リューの演奏からは、華麗さが演出されればされるほど、逆に曲にひそんでいる哀愁が掻き立てられるという、いかにもショスタコーヴィッチの音楽らしい皮肉さが感じられてなりません。
そして私は、美しいサウンドで聴かせるコンセルトヘボウの演奏よりも、
採って付けたような華麗さを装うリューの演奏の方が、この曲にはふさわしいと思うのです。