放 浪 記 (53)

同じ曲でも…

2010.2.20 


先日BSを見ていると、指揮者でありヴァイオリニストでもあるアンドレ・リュー(ベルギー:1949-)率いるヨハン・シュトラウス・オーケストラ(リュー自身が結成した自前のオケ)の公演が放映されていました。

彼の経歴をWikipediaで見ると、「音楽は楽しむもの」との信念のもと、クラシック音楽を気楽に楽しめるように、そして観客自らも気軽に参加できるように、

さまざまな演出を試みながら指揮するスタイルのコンサートを、世界各国で開いているとか。

彼のコンサートを見るのは二度目ですが、難しいことは抜きにして、とにかく楽しい!

自身もヴァイオリンを弾きながら指揮する姿は、昔日のボスコフスキー/ウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートの映像を思い出しました。


彼の公演の定番になっているのが、どうやら『美しく青きドナウ』とショスタコーヴィッチの『セカンド・ワルツ』のようで、

これらの曲が始まると、場内に予め設けられたスペースが観客も飛び入りで参加できるダンスホールに変身し、聴衆も手慣れた様子で楽しんでいることが如実に伝わってきます。

TVでリューの演奏する『セカンド・ワルツ』の鄙びた哀愁を湛えたメロディーを初めて聴いた時、

子供の頃駅前で興行していたサーカスの音楽や、

場末の安物のキャバレーでダンスに興じる人々の姿に共通したうら悲しさと共通する、

そんな光景が、物凄く懐かしく思い出されたのです…。


ただ、TVで初めてこの曲を聴いた時は、表示を見逃したために、曲名が判りません。

懐かしい感慨を覚える曲が正体不明のままでは、気持が落ち着かないもので、

寝ても覚めても必死に記憶をたどりました…。

あれやこれやと心当たりのディスクを取り出して、結局曲名が判るまでには、1週間は要したと思います。

家に有ったCDの中から漸く見つけ出して、ショスタコーヴィッチのジャズ組曲第2番!その6曲目の「第2ワルツ」と判明しました。


私が所有していたディスクは、それ以前に2〜3度は聴いていたのですが、

リッカルド・シャイー/ロイヤル・コンセルトヘボウ管の演奏から受けた印象と、アンドレ・リューのからの印象が、余りに違いすぎたせいでした。

シャイーの演奏にも、前述したようなペーソスは控え目に漂っていますが、曲の素性を知った今も、リュウの演奏から得られる感慨は、全く湧いてきません。

リューの演奏からは、華麗さが演出されればされるほど、逆に曲にひそんでいる哀愁が掻き立てられるという、いかにもショスタコーヴィッチの音楽らしい皮肉さが感じられてなりません。

そして私は、美しいサウンドで聴かせるコンセルトヘボウの演奏よりも、

採って付けたような華麗さを装うリューの演奏の方が、この曲にはふさわしいと思うのです。