放 浪 記 (48)

光 の 春 ?

2010.1.9 


光の春とは、“立春が過ぎて日の光が日増しに強くなり、余寒厳しい中にも春の訪れが感じられる季節”を表わす言葉なんだそうですね。

自然に囲まれて暮らすようになってからは、例え日々の気温が氷点下10℃以下になろうとも、真冬日が続こうとも、

正月が明ける頃には、日の出が段々と早まり、陽射しも日ごとに強まってきますので、「春遠からじ」を実感できるようになってきます。

そのために、言葉の約束事を知らなかった私は、今頃の時期から立春にかけて「光の春が感じられる」とあちこちで言ってきましたが、結局は知ったかぶりして喋るたびに恥をかいていたわけです…。

「あのバカ!」と思われた方!厳しい冬を過ごしている分、それだけ春が来るのを心待ちにしているのだろうと大目に見て、どうか聞かなかったことにしておいてくださいね。


ところで、ピアニストの舘野泉さんが、セリム・パルムグレン(1876-1951:フィンランドの作曲家・ピアニスト)の作品を収めたCDのライナーノートに書かれていたのですが…

北欧の人々は、季節を「暑さ寒さ」ではなく、「明るい暗い」で感じるそうですね。

主にパルムグレンの中期の作品が収録されているディスク中には、

第1曲目から順に、『前奏曲』『打ち捨てられた者の歌』『とんぼ』『五月の夜』『ダンス=インテルメッツオ」『舟歌』『後奏曲』

以上、七つのピアノの小品をまとめた、組曲『春』op.27という作品があります。

「光の詩人」と言われるパルムグレンが、そんな北欧の春をどのように表現しているのか、興味を持って聴き始めました。


1曲目の『前奏曲』では、靄の中に微妙な薄明かりが感じられますが…、早春の北欧の情景を表現しているのでしょうか。

3曲目の『とんぼ』は、きらめく陽光の変化を、飛びまわるトンボの動きに託したのでしょうか。光に満ち溢れた季節の喜びがささやかに表現された、素晴らしい作品です。

4曲目の『五月の夜』は、白夜を描写した音楽なのでしょう。不思議な抒情をたたえた、美しく印象的な佳曲だと思います!

6曲目の{舟歌』では、波間に揺蕩う小舟のように、雲間から見え隠れする不安定な陽射しの移ろいが…。

この作曲家の作品は、せめて代表作だけでも、もう少し聴いてみたいと思います。