放 浪 記 (46)

2009年の聴き納め

2010.1.1 


明けましておめでとうございます。開設してようやく9ヶ月目に入ったばかりの未熟なホームページですが、今年もよろしくお願い致します。

昨年の大晦日には、一年の聴き納めの曲として、久しぶりにベートーヴェンの『荘厳ミサ曲』を聴きました。

この年(61歳)になると、年末年始と言っても特別な感慨が湧くわけではありませんが、一応は一年の節目となる日との意識が働いて、どうしても重量感のある曲を選んでしまう傾向が強いようです…。

昨日聴いたディスクは、昔から名盤との定評のあるクレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管のものですが、悠揚として迫らぬ態度で曲が進行していくことは、どなたもが想像されるところだと思います。


第1曲のキリエ(主よ、憐れみたまえ)は、悠然とした足どりで一歩一歩前進していくような、厳かさと崇高さをたたえた演奏は、やはり余人をもっては代えがたい風格が感じられます。

第2曲グローリア(栄光)は、いきなり歓喜に満ちて開始されますが、

それが鎮まると、深い思索に耽るような瞑想的な音楽が…

そしてティンパニーが轟き、それに続くフーガの圧倒的な盛り上がりは、崇高としか言いようのない圧倒的なもの!

第3曲クレド(信仰告白)では、第2部のキリストの誕生の神秘的な感動や、受難の悲しみが歌われる高貴さに満ちた音楽

そして、冒頭の主題が再現された後に、静かに湧きおこるフーガは、晴れやかさと力強さを増しつつ、素晴らしい高揚感を与えてくれます。

先に述べたグローリアのフーガ部分共々、ぜひとも実演で聴いてみたいと願っている音楽です…。

サンクトス(神への感謝)では、第9シンフォニーの二重フーガの前に奏されるような深みのある厳かさも素晴らしのですが、

ベネディクトスでのソロ・ヴァイオリンの奏でる響きは、無邪気な天使の姿を思い浮かべるようで、天上を逍遙するようなこの世のものとは思えない、高貴な慶びに溢れた音楽です。
第9の第3楽章のお好きな方は、是非ご一聴されることをお薦めします。

アニュス・ディでは、悲しみに満ちた懺悔の祈りのような音楽で始まり、ティンパニーとトランペットによって戦いの予兆が提示されますが、やがては敬虔な祈りの音楽へと鎮まって…。

こんな感動の極地に浸っているところで、ディスク上の不具合ゆえのノイズが盛大に混入し始め、たまらなくなってディスクを取り出してしまいました。最悪です!


気をとり直して、バーンスタイン/コンセルトヘボウ盤で少しでも感動を補おうとしましたが、所詮は虚しい努力に終わり、散々な聴き納めでした。

気分を一新して、ひと寝入りしてから「心から出でて心に通う」音楽を求めて、今年も 聴いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。