放 浪 記 (42)

野生との触れ合い

2009.11.22 


我家の周囲の落葉松もすっかり落葉し、二階の窓から眺めると、木々の間から雪化粧をした浅間山の姿が見える季節になりました。

こちらに引越してきた最初の年の冬には、木立に遮られて、見えなかったはずでしたが…

二年前の台風による倒木被害のあった年の冬に、ふと気がつくと木々の間から円錐型の美しい山容が!

変わらないと思っていた我家の周囲の自然も、時の流れには逆らうこともなく、刻々と変化しているようです。


今朝、ジャーマン・ショートヘア・ポインターの『ソラ』に引っ張られながら山道を散歩していたのですが、途中から気もそぞろな様子となり、しきりに頭上を見上げ始めました。

それに呼応して、瞬時に視線を向けるのが当たり前の行動でしょうが、

私の場合は、頚椎疾患を患って、6年前に手術を受けているために、首の動く範囲がごく限られたものとなってしまいました。

ですから、まずは「よっこらしょ!」とその方向に身体を向け直して、

やおら上目遣いに、落葉して見通しがよくなった木々の梢に視線をやると…。

二匹の日本猿が、電線の上からのんびりとこちらを観察しているではありませんか!


不思議なことに、これまでは猿の姿を見ると、興奮して吠えたてていた『ソラ』ですが、今回はそんな様子も見せずに落ち着いています。

若い猿だからかもしれませんが、仕草一つを見ても、旧軽井沢界隈で目にする世間ずれした奴らとは違って、慎ましやかで愛らしく感じられました。

私も警戒心を解いて、しばらくは向かい合って様子を窺っていましたが、こちらの気持ちが伝わるのか、相手もすっかり寛いでいる様子…。

しばらくすると、猿同士が目配せ(したように見えました)して、私達とは反対の方向に、ゆっくりと電線伝いに移動し始めました。

『ソラ』もその姿を目で追いますが、こちらも穏やかなものです。


この二匹に一目惚れしていた私は、思わず「またおいでね!」と声をかけると…

振り向きこそしませんでしたが、一瞬歩みを止めた背中の表情から、

明らかに私の呼び掛けに反応したと思ったのは、単なる当方の欲目だったのでしょうか…。


「近いうちに、再び様子を窺いに来るのだろうか」とか…

「今度会った時にはどんな反応を示してくれるのだろうか」とか…

猿ともそんな付き合いができれば、きっと楽しいでしょうね!

「猿はしたたかだよ。あんたも甘いね!」と地元の人から笑われそうですが…。