放 浪 記 (31)

幻の心のふれあい

2009.9.17 


我家の元放浪犬、現在は我が家の番犬役を担うソラ(ジャーマン・ショートヘア・ポインター?:推定メス4歳)が、朝方の3時半ごろに、小さな声で“ワン”。

「用を足したいのだろうか」と気がかりになって眠れずにいると、30分ほどしてからもう一度“ワン”…。

我慢しているのなら可哀想なので、庭で放してやると、いつもトイレにしている方向に向かって一目散。

普段は、済めばすぐに戻ってくるのですが…。

「ソラ!」と呼ぶと、ようやく暗闇の中をコソコソと音をさせながら近づいてきました。何となく元気がありません。

明るくなってから、庭を捜してみると、案の定嘔吐物がありました。

念のために朝を抜いて様子を見ましたが、普段は半日も経てば食事を欲しがる子が、今日に限っては、食欲も細く、回復の兆しがみられません。

獣医さんに診てもらうと、微熱があるとのこと。抗生剤の注射をしてもらい、一晩様子を見たのですが…。

翌朝は食事を出しても、口をつけようともしませんでした。

「ソラ、大丈夫か。おまえは大事なうちの子やから、早く元気になってくれよ!」

そんなことを話しかけながら頭や背中を撫でてやると、普段話を聞かない子が、体を摺り寄せて甘えてきます。「よしよし。いい子だな。頑張れよ!」。

ようやく気持ちが通じるようになったのかと、そんな感慨で、目頭が熱くなってきました。


この子が我が家に迷い込んでから三年近く。

飼い主に捨てられて人間不信に陥っていたのでしょう。猜疑心が強く、最初の頃は気持の反りが合わずに、世話することを投げ出したくなることもありました。

もともと我が家には、高齢の柴犬家族が室内犬として同居しており、体の大きさや運動量が全く異なるこの子だけは玄関の物置に繋いでいました。

そんなせいもあったのか、いま一つ心が通じ合えないジレンマを抱いていたのです。


その日の朝一番に、もう一度獣医さんに行き、胃薬を飲ませることによって、午後にはようやく食欲が出てきて、ひと安心することができました。

今朝は、普段通りに前を通る人や動物に向かって、“ウォンウォンウォンウォンウォーン”と吠えています。

「ソラ、元気になってよかったな!」

私が話しかけても、いつものように聞こうともせずに、食べ物が貰えるものと思って、しきりに玄関の中ばかり気にしています。

これが我が家の平穏な生活なのですね。やれ、やれ…!