放 浪 記 (28)

世界陸上の実況中継

2009.8.18 


世界陸上が始まって早々、男子100m決勝で、ウサイン・ボルト選手が9″58という驚異的な世界新記録で優勝して、大いに盛り上がっています。

高校・大学と陸上競技部に所属し、短距離をやっていましたので、陸上競技には人一倍の思い入れを抱いているのですが、最近はリアルタイムに行われる放送を観ることが、殆んどありません。

理由は二つあります。

ひとつは、種目別の競技開始時間が一般視聴者に分からないように仕組まれて、見たい競技をスポット的に選べないためです。

特に視聴者が注目する競技に関しては、放送開始直後から、「もう間もなくです!」というメインキャスターの言葉に引き摺られて、TVを見続けざるを得ず、

そのことに腹立たしさを感じられた方は、少なくないはずです。

放映されている限りは、出来るだけ高い視聴率を得て、番組の価値を高めたいという商業主義的な目的もあるのでしょうが…。

でも、多くの国民の関心を惹きつけておいて、視聴者の行動をがんじがらめにするような行為って、決してフェアーなものとは思えないのです。NHKのように、競技開始予定時間をはっきりと知らせてくれています。

「たかがスポーツ中継ごときで、大げさな!」と言われそうですが 、

視聴率を上げるために、意図的に種目別競技開始時間を知らせないという行為は、

個人のプライヴァシーに踏み込んだ報道をした時に噴出する批判に対し、マスコミの方が声を大にして主張される“国民の知る権利”を、

意図的に無視することによって、結果的に選択の自由を奪うことにならないのでしょうか。

その態度は、「巨額の放映権を支払って、多くの人々のニーズに応えているのだから、文句を言われる筋合いはない!」と言わんばかりの、マスコミの奢りの一端を垣間見るように思えるのです。

最近の私は、TVの前に釘付けにされるのが馬鹿らしくなって、各競技の開始時間が報道されない世界陸上は、リアルタイムに競技を観ることは一切やめ、全て録画収録に頼ることにしました。

もうひとつは、キャスターの無用なお喋りが長引くために、競技前のじわじわと締め付けられるような、独特の緊張感が感じられなくなりました。

競技間の間延びする時間を埋め、視聴者にチャンネルを変えさせないようにするためなのでしょうが、彼・彼女らが喋れば喋るほど、時間つぶしであることが見え見えで、視聴者のシラケ感は増すばかりだと思うのです。

一度でも競技場へ足を運んだ方ならご存知だと思いますが、陸上競技観戦のだいご味の一つは、競技開始前の選手の一挙手一投足を観ながら、緊張感の高まりを共有できることにあります。

近年、民放の実況からは、そんな醍醐味が感じられなくなって、生中継で観る値打ちは半減しました。

番組を再生する時には、早送りを駆使して、キャスターの無駄なおしゃべりやCMは、全てカットしますので、悪しからず!

ただ、競技別開始時間が分かるNHKの放送は、キャスターのお喋りもなく、TVの前で競技場の緊張感が共有できるので、夜遅くなっても頑張って観るようにしていることを、申し添えておきます…。