放 浪 記 (16)

涼しげな音色

2009.5(4) 


5/10、正午のニュースによると、隣町の群馬県下仁田町では、午前中にすでに全国最高気温の32℃に達していたとか…。どうりで朝から暑いはずです。

健康だけが取り柄の我が家の元放浪犬、(多分)ジャーマン・ショートヘアード・ポインターも、暑気あたりのせいか、朝の散歩で嘔吐してしまいました。

しかし帰宅後は、食事にありつけなければ大変と、何でもないことを誇示するために、健気にも庭を走りまわっていましたが、案の定妻から朝食をもらうことができずに、しょんぼりしています。

3〜4日前は、夜は氷点下近くまで気温が下がり、犬舎に毛布を敷き直したのに、一転して真夏日になろうかという気候の変動には、人犬共に体調がおかしくなってきます。

我家で唯一エアコンが備えられているのは、オーディオ・ルーム。

あまりの暑さ(最高気温は29.3℃)に、温度を25℃に設定して、除湿機能を働かせながら音楽を聴き始めました…。

すると、来月に15歳の誕生日を迎える2匹の柴犬姉妹は、早速快適な部屋に移動してきて、床に寝そべりながら、一緒に音楽を聴いて(?)います。

ところで、数年前から冷房を使い始めた初日には、必ずクラウディオ・シモーネ指揮するイ・ソリスティ・ヴェネティの、バロック期や古典派の作品を聴くようになりました。

このオケが奏する、滑らかで透明感に溢れた音色を聴くと、水量豊かにこんこんと湧きあがる清冽な泉を連想して、涼やかな気持ちになれるからです。

今日もそんな涼やかさを求めて、タルティーニのヴァイオリン協奏曲ホ短調(D.56)を聴きました。

イタリアバロック音楽の作曲家によって書かれたこの作品は、超絶技巧で知られる『悪魔のトリル』とは趣を異にした、美しい旋律に満ちた作品です。

イ・ソリスティ・ヴェネティ奏する室内オケをバックに、ウト・ウーギのヴァイオリンの音色は、底まで透き通って見える水面を、滑るように泳ぐアメンボウが残す静かな波紋のような風情が感じられる、涼しげな演奏。

柴犬の姉妹も、気持ちよさそうに寝入っていますし…、いい曲・いい演奏に出遭えたと思います!

飼い主に心配をかけた元放浪犬のポインター嬢は、いつもより少なめの量でしたが、夕方にはようやく食事にありつけて、道路を通る人や小動物に“ウォンウォン”と、自分の存在を誇示するようになりました。