その一つ、町内にある小さな教会では、2日間にわたりメシアンの愛弟子でもあるピアニストの藤井一興さんによるミニコンサートが開かれました。
第1日目が『幼児イエスに注がれる20の眼差し』からの数曲が、
2日目には『鳥のカタログ』からの1曲と、『ニワムシクイ』が演奏されました。
空調設備のない小さな教会で、夏の日の午後4時から開催されたこのコンサートは、暑さをしのぐために窓は開放されたまま。
上空を飛ぶ飛行機の音が聞こえたり、
子供たちの帰宅を促すために有線から流される“夕焼け小焼け”が聞こえたり…。
時折、カッコウの鳴き声が演奏に華を添えたり(?)…。
ピアノも古く、調律も大変だったそうです。
そんな条件下での演奏会、「演奏者にお気の毒!」と気をもみながら聴いていたのですが…
集中を途切れさせることなく演奏を完遂し、
終了後のトークでは、「メシアンの音楽に誘われて、鳥たちも集まって来たようで…」などと軽口をたたかれ、
苦労して調律された方にも謝辞を述べておられた藤井さんのプロ根性には、ほとほと感服しました。
表題曲は、その時演奏された一曲です。
藤井さんの解説によると、ニワムシクイという名の鳥を主人公として、夜明け前から夜寝静まるまでの自然界の様々な営みを描いた作品で、演奏時間が30分を優に超える大作です。
演奏中は前述した様々な環境音に気が散って、時々集中は途切らされたものの、気を取り直すとすぐにその世界に没入できる音楽でした。
そして、そんな環境の中で、いつの間にかメシアンの音楽を楽しめるようになっている自分に気付いたものでした。
この演奏会当日までは、メシアンの鳥をテーマにした作品は、全曲にわたって採譜した鳥の鳴き声によって構成されているとばかり思い込んでいた私は、それを聴き取ることに神経を集中させ、曲を楽しむことが出来ませんでした。
しかし、氏の解説によってそんな思い込みが払拭され、大らかな環境でメシアンの愛弟子の演奏を聴くことができました。
そのお蔭で、『鳥のカタログ』『諸国の鳥たち』『ニワムシクイ』等々が、一変して親しみ易い身近な曲と感じるようになりました。
2009年の2月2日、夜中の2時頃に浅間山が小噴火をおこしたために、不安で眠れない夜を過ごしました。
幸い翌朝には沈静化してようやく気持ちが落ち着いた時、無性に聴きたくなったのがウゴルスキーの演奏する『ニワムシクイ』でした。
聴いていると気持ちが休まり、自然の恵みを享受できる喜びに浸ることができます。
還暦を過ぎた今、新たなレパートリーに感動できることを感謝しています…。