放 浪 記 (8)

-懐かしい曲との再会-

2003.10 


十月に入ってからは好天に恵まれていますが、不順だった天候が尾を引いているのでしょうか。

昨年のような、吸い込まれるような澄み切った青空には、殆どお目にかかれません。

それでも、黄色く染まった白樺の木の葉が風に散って庭一面を覆う風情は、日毎の秋の深まりを実感させてくれます。

そんな先日の夕刻、窓越しに、黄葉した木の葉が舞う様を見ていた時、突然グラズノフのコンサートワルツ第一番≠フ旋律が、心に鳴り響き出しました。

この曲は、昔NHKのFMで午後1時から放送されていた、「午後の名曲の時間です!」の語りで始まる音楽番組のテーマ曲として、冒頭と最後に流れていたものでした。

学生時代には、繰り返し何度も耳にして、その旋律の美しさには惹かれたものですが、曲名を知リたいと思ったぐらいで、それ以上の興味は湧かなかったように思います。

若い頃は、曲の印象を視覚的なそれに置き換えることができないと、本当に曲が理解できているのかと、疑心暗鬼に陥った時期がありました。

ですから、もしかすると、当時この曲から受けた印象を、黄色に染まった白樺の葉が、木々を離れて風に舞うさまに置き換えていたのかも知れません。

でも、ふと我に返ると、周りは見慣れた秋の風情…。

「何故こんな気持ちになったのだろう」と、不思議に思いました。

そこで、久しぶりにディスクを聴いてみると…。

此の地で聴くグラズノフのワルツは、各旋律が実在する周囲の風景と見事に調和。

「作曲家も、こんな風景の中で曲を思い浮かべたのではないか」と確信できるほどでした。

もし機会があれば、落ち葉の季節に聴かれてみてはいかがでしょう。