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オリヴィエ・メシアン:世の終わりのための四重奏曲 

オリ・ムストネン(ピアノ)  スティーヴン・イッサーリス(チェロ)
ジョシュア・ベル(ヴァイオリン)  マイケル・コリンズ(クラリネット)


20世紀フランスの作曲家オリヴィエ・メシアン(1908−92)の代表作。

1940年、ドイツ軍の捕虜となったメシアンが、

同じゲルリッツ(独)の収容所に捕虜として収監されている演奏家たち(ぴあのクラリネット・ヴァイオリン・チェロ奏者)と演奏するために、旧約聖書ヨハネの黙示録の第10章から想を得て作曲したとされています。


尚、旧約聖書第10章の内容は、以下の通り。

「わたくしは,一人の強い天使が天からくだるのを見た。かれは雲につつまれ,頭上には虹があった。顔は太陽のようであり,足は火の柱のようであった。右の足を海の上に,左足を地の上に置き,海と地の上に立ち,手を天に向ってあげて,世々限りなく生きるあの方に誓っていった。時はもはや延びることがない。そして第7の天使のらっぱの日に,神の奥義が成就される」

曲名の「世の終わりの…」は、「世界滅亡?」と勘違いしそう…。

むしろ「時の終わりの…」と直訳された方が、なんとなく意味が通じるような気がします。


獄内で完成されたこの作品は、メシアン自身もピアノを担当して、1941年の1月、極寒の収容所内で初演されました。

その時使われた収容所内の楽器は、ピアノの弦の一部は切れていたり、チェロの弦が3本しかなかったり…。

そんな劣悪な条件下、数千人の捕虜を聴衆として行われた初演でしたが、

音楽に飢えていた彼らは貪るように聴き、大成功裏に終わったという、伝説的なエピソードが残された作品。

そういえば、メシアンの愛弟子だったピアニストの藤井和興さんは、某教会の調律の不完全なピアノで、メシアンの「鳥のカタログ」から一曲を弾かれ、それに感動したことを思い出しました…!


【1.水晶の礼拝】

ピアノの澄んだ響きと、チェロの高音が静謐さを醸す中、それぞれの楽器が鳥の囀りを奏でる…。

自然の崇高さが感じられる、第1曲です!


【2.世の終わりを告げる天使のヴォカリーズ】

ピアノがカリヨンの響きを、ヴァイオリンとチェロが弱音で延々とレシタティーヴォを奏で、クラリネットが鳥の囀りを…。

奇跡を予感させるような、印象的な美しい曲。


【3.鳥たちの深淵】

孤独な、しかし心が鎮まるような、独奏クラリネットによる深々とした響き。

聴き入っていると、無の境地に惹き込まれていくような法悦感を覚えます。


【4.間奏曲】

鼻歌を思わせる旋律や、心を和ませる旋律も顔をだし、目まぐるしくも、愉悦感を覚える間奏曲。


【5.イエスの永遠性に対する讃歌】

淡々と時を刻むようなピアノの和音と、息の長いチェロの旋律が、次第に高揚し、宗教的法悦感に酔いしれる曲!


【6.七つのラッパのための狂乱の踊り】

前曲とはうって変わって世俗的で、ジャズっぽさを感じるこの曲。

第7のラッパが鳴らされると、キリスト教徒でない地上の人間を滅ぼすために、雷や地震を起こすとか…。


【7.世の終わりを告げる天使のための虹の混乱】

ピアノの和音の上を流れるチェロの息の長い旋律は、壊滅的な事態の訪れの予感が…。

荒々しく目くるめくような音楽は、宇宙に翻弄される地球の姿…。

ピアノを中心とした色彩豊かな部分は、果てしない宇宙的な空間を髣髴します。


【8.イエスの不滅性への讃歌】

弔いの(or時を刻む)鐘の音を思わせるピアノの和音と、

か細いヴァイオリンの音が永遠の安寧を求めてさまよう、崇高な美を湛えた曲。


各曲に付けられた標題をはじめ、宗教上のことは何もわからないながらも、

弱音部の息を呑むような神々しさ、崇高さに惹き込まれていき、

聴後には、精神的充足感を味わえた演奏。

大いに気に入って、3度も繰り返し聴き直してしまいました。

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