ステージ下の大編成のオーケストラに加えて、舞台裏にバンダを要し、更に合唱陣・独唱陣が加わるために、
1932年の初演時を皮切りに10数回の公演が行われたものの、それ以降はバレーのレパートリーとしては定着していません。
そのことを見越してか、1934年には作曲者自身が4曲から成る組曲版を編纂。
しかしながら、ローマ三部作のような人気はなく、発売されているCDも数少ないようです…。
ただ、レスピーギ特有の色彩的で豪華絢爛な管弦楽法ゆえに、吹奏楽に携わる人々によって編曲され、そのレパートリーとして人気を博しているようです。
バレー全曲の粗筋は…、紀元前10世紀の頃、40年間にわたり全イスラムを統治し、名君の誉れ高かったダビデ。
その息子ソロモンも又、父親と同じく軍事・政治・文学に秀でた名君として、世間に遍く知られていました。
その真偽を探るために、シバ(アラビア半島南部)の女王ベルギスは、ソロモンを訪問。
彼女は、ソロモンの偉大さに心惹かれ、ソロモンも又、ベルギスの類稀な美貌に心を奪われます。
親密な関係になった二人は、お互いの国同士の同盟を結ぶ…。
そういった旧約聖書上の物語を扱った作品です。
【第1曲:ソロモンの夢】
冒頭から、イングリッシュ・ホルンやクラリネットなどの木管楽器によって、エキゾチックな情緒を色濃く漂わせた、物憂げで妖艶な旋律を奏でられ、物語の世界に惹き込まれます。
続いて登場する、やはり異国情緒を湛えた堂々たる力強い旋律は、ソロモン王を表しているのでしょう。
これが鎮まり、ハープに彩られた独奏チェロによって、美しくも艶めかしい旋律が奏でられるさまは、夢の中に登場する女王ベルキスを表しているのでしょう…。
その後の二人の燃え上がる愛を予言するように、曲は燃え上がります。
最後は、バンダによって夜明けの到来が告げられ、美しい余韻を湛えつつ、夢から覚めていくソロモン王…。
【第2曲:戦いの踊り】
ティンパニーの強打と、金管楽器の咆哮は、荒々しく野性的!
それが収まると、太鼓の刻むシンコペーションの土俗的なリズムに乗って、クラリネットが異国風の旋律を奏でます。
演奏時間3分弱のこの第2曲は、ストラヴィンスキー「春の祭典」も真っ青の、凶暴なバーバリズムが…!
【第3曲:夜明けのベルキスの踊り】
ティンパニーの軽いリズムに乗って、フルートが美しく雅な旋律を奏でる「ベルギスの踊り」。
チェレスタ、木管、打楽器群が装飾の限りを尽くしつつ、妖艶さが増し、激しく絶頂に達する…。
こんな情景が延々と繰り広げられていく、第3曲。
どんなバレーが展開されるのか、ちょっと見てみたい気がします。
【第4曲:狂宴の踊り】
激しく情熱的に開始される冒頭部。打楽器が加わり、野性的な強烈なリズムが展開。
一旦静まり、舞台裏から聞こえるトランペットの抒情的な旋律は、ベルキスの清純な側面を表しているよう…?
再びエネルギッシュに激しく盛り上がり、最後は讃歌のように終わります。
描写的な曲想ゆえに、バレーの粗筋を知った上で、タイトルを見ながら組曲版を聴くと、情景は容易に推察できます。
華麗なオーケストラ・サウンドを楽しむには、もってこいの作品。
ただ、ローマ三部作ほどの人気が出ないのも仕方ないかなぁ、とは思いますが…。