今日、セル指揮するクリーヴランド管弦楽団のCD(1960年盤)を初めて聴いたのですが、
スマートで爽やかな流れに加えて、若く瑞々しい感性が吹き上がる演奏に、「こんなにいい曲だったの!」とあらためて感嘆!
「力強さ」「激情的」といった、これまで他の演奏で聴いてきたこの曲の印象は完全に払拭され、新たな交響曲第35番の世界へと誘われていきました!
【第1楽章:Allegro con spirito】
冒頭から、きびきびとして精緻な演奏が展開されていきます。主題部は、泉から湧き溢れる清水のような、爽やかな清涼感に満ちた音楽。
展開部で、短調へと転調されてカノン風に進行していくところは、太陽が雲に隠れて、翳りができたような趣が…。
ウィーンやドイツ風のモーツァルト解釈とは一線を画した、瑞々しさが実感できる演奏です!
【第2楽章:Andante】
溌剌・きびきびとしたテンポ感と透明な音色で、清らかな水の流れのように心地良く進行する第1主題。
第2主題のリズムの刻みも実に爽やかですが、次第に流れが緩やかになるようにテンポが落されてゆき、得も言われぬ至福の時が訪れます。
こんなに美しいモーツァルト演奏、滅多に聴けるものではありません!
【第3楽章:Menuetto】
主部の力強い付点リズムと軽快なテンポは、気持ちが浮き立つような爽快感をもたらすもの。
トリオ部は、温雅な旋律を支えるファゴットの持続音が、愉悦感を高める絶妙の効果あげているように感じられます。
【第4楽章:Presto】
決然として直進していく颯爽とした終楽章ですが、そのリズムの刻や木管楽器の節回しには、鼻歌交じりのような遊び心が聴き取れるのです。
モーツァルト作品の持つユーモアを格調高く再現した、素晴らしい演奏と感じます!
軽井沢にも、ようやく風薫る爽やかな新緑の季節が訪れました。
今の季節に聴くにピッタリの曲であり、演奏!
セルが残したモーツァルト録音が少ないこと、本当に残念に思います。