最近聴いたCD

ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 

エマーソン弦楽四重奏団


1962年のフルシチョフ時代に、キューバのカストロとの関係が深まったために、アメリカとの核戦争が一触即発の状態に陥っていたソ連において、

「2年前に結婚した(3度目の)妻イリーナに捧げるべく書いた」とされる、弦楽四重奏曲第9番。

その話を、額面通りに受け取っていいものやら…?

曲のテーマが何なのかは判らないままに聴いているのですが、どこか魅力的な作品!

第8番同様、全5楽章はアタッカで繋がっています。


【第1楽章:Moderate con moto】

不気味な哀感が滲み出るような冒頭部に続き、諧謔的なピチカートに乗って様々な思いが錯綜するように展開されていく、シビアな主部。


【第2楽章:Adagio】

諦めにも似た深い悲しみの中に、触れれば壊れそうな繊細な感情が言い知れぬ高みへと昇華されていくような、静謐で美しい音楽…。


【第3楽章:Allegretto】

シニカルでいて、何とも言えぬ愉悦感を感じさせる、いかにもショスタコーヴィチらしいスケルツォ。

圧力を加える敵を侮り見下すような、超然とした音楽に爽快さを感じるのは、未だにサラリーマン時代のトラウマが消えていないのでしょうか。

「我ながら、嫌な性格!」と思いつつ…!


【第4楽章:Adagio】

前楽章後半部からのすすり泣きが、強いピチカート→引き裂くような強奏によって完膚なきまでに打ちのめされ、憔悴し切った姿が…。


【第5楽章:Allegro】

切迫した緊張感を湛えて突き進むうちに、民族舞曲風でもあり、ロシアの労働歌風とも思える旋律が、力強くパロディー風に登場。

この旋律が結論となって、次第に愉しげに高まっていきます。

コーダでは、これまでに登場した旋律や動機が回顧されますが、最後は力強く終わります!


聴くほどに、ショスタコーヴィチらしい響きに惹かれつつ、力強い民族色が感じられる作品!

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