(聴き手として)オペラのレパートリーが少ない私は、せいぜい「タイス」の第2幕第1場と2場の間で演奏される間奏曲(「タイスの瞑想曲」)を思い浮かべる程度…。
でも、鄙びた音楽が聴きたくなった時に、極たまに取り出すのが、管弦楽組曲「絵のような風景」(以前にエントリー済み)と「アルザスの風景」。
初めて聴いた時から、第1曲に強いノスタルジーを感じたことと、
馴染み易い旋律で、全曲をストレス・フリーに愉しめた、
そんな印象が強く残っているためでしょう。
ところでこの曲は、1870〜71年にかけて勃発した普仏戦争時に、一兵卒としてアルザスに駐留したマスネが、
当地の素朴さに心を打たれ、後年楽曲としてまとめたものと、言われています。
【第1曲:日曜日の朝】
木管楽器がのどかで鄙びた田園風景を描き出す冒頭部。
人々の営みを思わせる、活気に満ちた音楽が交互に登場します。
速度を落として登場するコラール風の旋律は、教会の礼拝を表しているのでしょうか。
素朴さに心が打たれる、佳曲です!
【第2曲:酒場(キャバレー)で】
ティンパニの連打で開始される第2曲の冒頭部は、ミラクルを予感させるよう…。
それに続く華やかな主部は、活気あふれるカーニバルの様子を髣髴させてくれます…。
中間部のファンファーレ風に強奏されるホルンの響きが、華やかさを一層盛り上げます。
【第3曲:菩提樹の下で】
戸外の黄昏時を思わせる、抒情的な第3曲。
教会の鐘が夕方の6時を報せた後、
チェロとクラリネットが、まるで恋人たちの語らいのように、甘い言葉を交わします。
【第4曲:日曜日の夕方】
活気に溢れた民族舞曲で開始される第4曲。
華やかに盛り上がりつつ、酔っていつしか羽目を外してしまいますが…。
遠くから、兵士の進軍を思わせるスネアドラムが響き、チョロが淋しげな旋律を奏でるのが、この曲で唯一戦時の情景を髣髴させるもの…。
最後は、興奮状態が最高潮に達したままに、曲は終了します。
駐留地アルザスの、素朴な田園風景や軍隊での思い出を回想したこの作品…。
内容云々は別として、馴染み易いメロディーで、素直に懐かしさを共有できるような、私にとってはそんな作品と感じます。