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ジュール・マスネ:管弦楽組曲「アルザスの風景」

ジョン・エリオット・ガーディナー指揮  モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団


フランスの作曲家ジュール・マスネ(1842-1912)は、生前はオペラ作曲家として絶大な人気を誇ったそうですが、

(聴き手として)オペラのレパートリーが少ない私は、せいぜい「タイス」の第2幕第1場と2場の間で演奏される間奏曲(「タイスの瞑想曲」)を思い浮かべる程度…。

でも、鄙びた音楽が聴きたくなった時に、極たまに取り出すのが、管弦楽組曲「絵のような風景」(以前にエントリー済み)と「アルザスの風景」。

初めて聴いた時から、第1曲に強いノスタルジーを感じたことと、

馴染み易い旋律で、全曲をストレス・フリーに愉しめた、

そんな印象が強く残っているためでしょう。


ところでこの曲は、1870〜71年にかけて勃発した普仏戦争時に、一兵卒としてアルザスに駐留したマスネが、

当地の素朴さに心を打たれ、後年楽曲としてまとめたものと、言われています。


【第1曲:日曜日の朝】

木管楽器がのどかで鄙びた田園風景を描き出す冒頭部。

人々の営みを思わせる、活気に満ちた音楽が交互に登場します。

速度を落として登場するコラール風の旋律は、教会の礼拝を表しているのでしょうか。

素朴さに心が打たれる、佳曲です!


【第2曲:酒場(キャバレー)で】

ティンパニの連打で開始される第2曲の冒頭部は、ミラクルを予感させるよう…。

それに続く華やかな主部は、活気あふれるカーニバルの様子を髣髴させてくれます…。

中間部のファンファーレ風に強奏されるホルンの響きが、華やかさを一層盛り上げます。


【第3曲:菩提樹の下で】

戸外の黄昏時を思わせる、抒情的な第3曲。

教会の鐘が夕方の6時を報せた後、

チェロとクラリネットが、まるで恋人たちの語らいのように、甘い言葉を交わします。


【第4曲:日曜日の夕方】

活気に溢れた民族舞曲で開始される第4曲。

華やかに盛り上がりつつ、酔っていつしか羽目を外してしまいますが…。

遠くから、兵士の進軍を思わせるスネアドラムが響き、チョロが淋しげな旋律を奏でるのが、この曲で唯一戦時の情景を髣髴させるもの…。

最後は、興奮状態が最高潮に達したままに、曲は終了します。


駐留地アルザスの、素朴な田園風景や軍隊での思い出を回想したこの作品…。

内容云々は別として、馴染み易いメロディーで、素直に懐かしさを共有できるような、私にとってはそんな作品と感じます。

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