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ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 

シュターミッツ弦楽四重奏団


1875年に長女を、そして1877年の8月に次女を、翌9月には長男を相次いで亡くしたドヴォルザークでしたが、

その一方で、1875年に奨学金獲得を狙って応募した「モラヴィア二重唱曲集」がブラームスの目に留まり、

作曲家として、栄光の道へと踏み出すことになります。

その成功によって、出版社のジムロックから、ブラームスの「ハンガリア舞曲集」に匹敵する「スラヴ舞曲集」の作曲を依頼され、

「モラヴィア…」以上の成功を収めます。


1878年の12月、ヨーロッパ全土に名が知れ渡ったドヴォルザークに、当時高名だったフィレンツェ四重奏団の主宰者から、「スラヴ舞曲集」と同様な曲想の弦楽四重奏曲の作曲を依頼され、

それに応えて、1879年に書き上げられたのが「弦楽四重奏曲第10番」。

依頼通りにチェコの民族舞曲や、「ドゥムカ」というウクライナの民謡形式が使われています…。


この曲を、穏やかな中にしみじみとした郷愁と、そこはかとなく諦観が漂うシュターミッツ四重奏団の演奏をエントリーします。

悲しみをこらえつつ、我が子への思いを静かに語るような、作曲家の穏やかな人柄が滲み出たような演奏です!


【第1楽章:Allegro ma non troppo】

哀愁を伴った素朴な第1主題は、ボヘミアの平原の牧歌的な雰囲気が漂うもの。

ポルカ風の第2主題とが溶け合って、ボヘミアの穏やかな自然の中に、仄かな悲しみと郷愁を醸します。


【第2楽章:Dumka(Elegia);Andante con moto−Vivace】

この「ドゥムカ」は、チェコ語の「瞑想」を意味するとの学説もあるようですが…。

ヴィオラの響きが、一種独特の落ち着きと瞑想的な雰囲気を醸すように感じられます。

Vivace部では、一転してフリアント風の熱っぽい舞曲が登場しますが、ここにも仄かな郷愁が漂い、曲の均衡が保たれています。


【第3楽章:Romanza;Andante con moto】

ボヘミアの野に黄昏時が訪れ、寂しく頼りなげな、孤独な心情が漂いますが、

耳を澄ませると鳥たちの声が聞こえ、穏やかな憩いが訪れてくる、そんな魅力的な曲であり、演奏です。


【第4楽章:Allegro assai】

第1主題は、モラヴィア東部からスロヴァキアにかけて伝わる、活気に溢れた民族舞曲。

シュターミッツの演奏には、先述したごとく、ここでもしみじみとした郷愁と諦観が漂います。


ドヴォルザークの作品中でも、最も滋味深い作品かと思います。

地味ではありますが、じっくりと聴かれるに値する佳作!

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