最近聴いたCD

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 BWV1005

ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン)


春分の日を挟んだここ2〜3日、「すっかり春めいた陽気に…」と喜んでいましたら、今朝の軽井沢は−7℃とか。

日中も晴れてはいますが、浅間山から吹き降ろす北風が、風花を運んできます。

そんな厳しい寒さの中で、鶯の初鳴きを聴くことができました。

寒さに身が引き締まる中にも、春の到来を寿ぐ今日は、無意識のうちにシェリングの弾くバッハの無伴奏ソナタ第3番をCDトレイに…。

バッハの書いた3曲の無伴奏ヴァイオリンソナタ中、最も峻厳な内容を有し、近年好んで聴くようになった作品です!


【第1楽章:Adagio】

すすり泣くように奏される主題が、声部を増すにつれて共鳴し合い、混沌とした悲しみの様相を呈しますが、

次第に未来の解決へと突き進むような、強靭な信念を感じさせるシェリングの演奏(付点リズムを強調したゆえでしょうか)!


【第2楽章:Fuga alla breve】

カトリックの聖歌「聖霊よ来たれ」から採られたという、素朴で親しみやすい歌謡的な主題に基づくフーガ!

シェリングの演奏は、楽譜に書かれた音符を再現するのではなく、

たった今湧き上がったインスピレーションを建造物として構築していく、何よりもそんな喜びに溢れたもの。

音の美しさ云々を超越した、圧巻の演奏です!


【第3楽章:Largo】

一転して優美で愛らしく、高潔なイメージを抱かせるアリオーソ風の楽章!

何よりもひたむきな真摯さが実感できる、演奏です!


【第4楽章:Allegro assai】

のびのびとした音色と、自由闊達な躍動感に溢れた演奏に、音楽を聴く喜びが満喫できます。


実を申しますと、以前はパールマンの演奏、

とりわけ第1楽章の、声部を増すごとにイメージが無限に膨らんでいくような、インスピレーションに溢れた美しい演奏を好んでいたのですが、

その反面、第2楽章のフーガの、横に流れるような演奏に物足りなさを感じていたのです…。


世評の高いシェリングの1967年盤!

バッハの音楽の偉大なる創造性を余すところなく伝えてくれる、名盤中の名盤と申せるでしょう。

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