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セザール・フランク:交響詩「呪われた狩人」  

A.クリュイタンス指揮  ベルギー国立管弦楽団


ドイツの詩人ゴットフリート・オーギュスト・ビュルガー(1747-1794)のバラードを題材にして書かれた、フランク円熟期の1882年(60歳)の作品。

ビュルガーは、牧師の子として生まれましたが、教会の説く道徳では律しきれない民衆の感情を表現するとともに、時に支配者への抗議の姿勢を貫く内容の詩も発表しています。


交響詩「呪われた狩人」は、

「キリスト教の安息日(イエスの復活した日曜日=仕事を休み礼拝を行う聖なる日)にもかかわらず、部下の注進を無視して狩に明け暮れるラインの伯爵に、天罰が下される」

そういった内容のバラードをテキストにして作曲されているそうで、

「日曜の朝の風景」「狩」「呪い」「鬼神の追跡」の4つの部分から構成されています。


こだまするホルンののどかな響きと、低弦が奏でる厳かな旋律、教会の鐘の音に加え、フルートの奏でる旋律が、爽やかな農村の朝の情景を醸す冒頭部!

教会へと集って来る人々のざわめきもが聞こえてくるような、「日曜日の朝の風景」です。


狩を象徴するホルン(角笛)の響きと、それを止めて礼拝に向かわせようと注進する部下が交互に登場しますが、

次第に角笛の響きが部下の注進を凌駕し、華々しく活写されていきます!


突然曲が静まって、野太い低音で「呪い」の音楽が始まります。

金縛りに遭ったように動きが止まり、不気味さが漂うのですが、

途中、ワーグナーの楽劇「ラインの黄金」第1幕第1場の、ラインの乙女たちが歌う直前の雰囲気にそっくりな旋律が登場…。

救いが見いだせそうな明るさを感じるのですが…?


終盤の「鬼神の追跡」ではテンポが速まって、業火に追い立てられて逃げまどう伯爵の切迫感や、生涯狩を続けざるを得なくなった絶望感が…!

最後には冒頭に響いた教会の鐘が、一転して乱打された後に和音が強打され、曲は閉じられます。


「交響曲 ニ短調」「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」「弦楽四重奏曲 ニ長調」ら、最晩年に書かれた有名作品の、慈愛溢れる表現からはかけ離れた、スペクタクルな音楽!

ワーグナー風でもあり、リスト風でもあり…。

クリュイタンスのメリハリのきいた指揮によって、初めてこの曲を興味深く聴けました。

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