バレー音楽「蜘蛛の饗宴」は、1912年にパリの芸術劇場から委嘱されたもので、フランスの著名な生物学者ファーブルの「昆虫記」から霊感を受けて作曲されたと、言われています。
ただし、蜘蛛は昆虫には分類されませんので、念のため!
今日エントリーするのは、このバレー音楽から作曲家自身が抜粋して、「交響的断章」と名付けた7つの楽章から構成されたもの。
全曲は15分ほどの作品で、切れ目なく演奏されます。
クリュイタンス指揮するパリ音楽院管弦楽団による、1962年のセッション録音で…!
【第1楽章:前奏曲(庭園)】
大気の穏やかな揺らぎが感じられる、のどかな自然の情景を彷彿する冒頭部。
ホルンに先導されて、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」(ただし、作曲は1920年で、こちらが後)を想像させる舞踊音楽は、蜘蛛の踊りなのでしょうか?
インスピレーションが刺激される、面白い場面です!
【第2楽章:蟻の入場】
小太鼓に先導されて、とぼけた味わいを持つ行進曲が…。この辺りは、ラヴェルの「マ・メール・ロア」のような、メルヘンの世界を思わせます。
【第3楽章:蝶の踊り】
東洋風(or中国風)の旋律と、蝶の動きを思わせる弦の刻みが不思議な魅力を醸す、印象的な音楽です!
【第4楽章:カゲロウの孵化】
謎めいた雰囲気の音楽は、生命誕生の神秘を想像させてくれます。
【第5楽章:カゲロウの踊り】
チャーミングなヴァイオリンのソロは、孵化したばかりの若々しいカゲロウ…?
弱々しいながらも優雅に舞いつつ、儚く散るように終わります…。
【第6楽章:カゲロウの葬送】
フランスの作曲家の作品ながら、日本的な無常観が感じられる葬送行進曲!
【第7楽章:夜のとばりが下りた寂しい庭】
フルートが、穏やかながら寂寥とした旋律を奏で、儚い小動物の一生を偲ぶように終わります。
バレー全曲の音楽は未聴ですが、交響的断章として聴く限りでは、「蜘蛛の饗宴」という曲名の意味が今一つよくわかりません。
しかし、特に「カゲロウの孵化」以降の4曲については、儚い小動物をモチーフにして自然の営みを観念的に、且つ可視的に描写した、大変に印象的な作品として聴くことができました。
時に官能をくすぐるような、クリュイタンス//パリ音楽院管の演奏の素晴らしさには、脱帽です!