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フォーレ:ピアノ四重奏曲第1番 op.15

ジャン・ユボー(ピアノ)  R.ガロウ=モンブラン(ヴァイオリン)   
コレット・ルキアン(ヴィオラ)  アンドレ・ナヴァラ(チェロ)


フォーレ31歳の1876年から書き始め、79年に完成されたピアノ・ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロのための四重奏曲。

ヴァイオリン・ソナタ第1番の成功、マドレーヌ寺院の楽長への昇進といった慶事があった反面、

一方的に婚約を破棄されるという、精神的に大きなダメージを受けた時期でもありました。

しかしながら、今日エントリーするユヴォーを中心とするアンサンブルのCDでは、

美しくきらめくようなピアノのアルペジオも秀逸ですが、

それを慎ましやかに伴奏するだけにとどまらず、時に歌い、時に語るように奏されるそれぞれの弦楽器が織りなす音色の妙は、

まさに「至高の美」とさえ思えるものです。

この印象は、ホールの豊かな残響を採り入れた録音に負うところが大なのかもしれませんが…。


【第1楽章:Allegro molto moderate】

冒頭、いきなり狂おしいような情熱を伴って登場した第1主題が、夢の中に仄かに浮かびあがるように繰り返され、

その後にピアノのアルペジオに続いて、儚さを湛えた第2主題が登場します!

展開部に入るところでは、絶妙な呼吸でテンポが緩められ、それぞれの楽器がレシタティヴォ風に語りますが、ここはまさに夢見心地の美しさ!

夢と現が交互に登場するような、充実した楽章です。


【第2楽章:Scherzo】

幻想的で軽やかなのですが、「妖精が飛び回る」と言う言葉では言い表せない、よりめまぐるしい動きを持った、不思議な印象を受けるスケルツオ!

トリオ部ではピアノの飛び跳ねるようなリズムと相反するように、感情を押し殺したように奏でられる弦楽器の印象的な音色は、弱音器の効果によるものでしょうか、

諧謔的とも、官能的とも言えそうな不思議な印象が、心に刻印されます。


【第3楽章:Adagio】

チェロが奏でる第1主題は、同時期に作曲された歌曲「夢のあとに」を思わせる、儚くも美しいもの!

疲弊した心を慰めるように、ピアノのアルペジオを伴って弦楽器が歌う第2主題は、崇高な美しさをもって次第に高まっていきます。


【第4楽章:Allegro molto】

想い出のヴェールに包まれた、若々しい躍動感にあふれる第1主題と、

晴れやかな懐かしさを伴った第2主題が絡まりながら展開していく終楽章は、

まだ30歳代前半の作曲家ながら、若かりし日の青春の思い出を懐かしむような趣が感じられます。


「現実を超えた高みへの憧れ」が如実に表現されたこの演奏の美しさには、一も二もなく脱帽します。

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