最近聴いたCD

サン=サーンス:交響詩「ファエトン」  

ロリン・マゼール指揮  ピッツバーク交響楽団


サン=サーンスが38歳の1873年、ギリシャ神話に題材をとった第2作目の交響詩。

神話の内容は、馬車で太陽を惹きながら天体の軌道を司る太陽神アポロンは、多忙故に我が子ファエトンに会うことができず、

ファエトンも又、父の名も顔も知らないままに育ちましたが、

成人後にその存在を聞き及ぶにあたり、是非とも会いたいとの願望が高まります。

ようやく父アポロに会い、その偉大さに心打たれたファエトンは、

自らも父と同じように馬車を駆って、天体の運行を司りたいと父アポロに申し出ます。

アポロは、息子には困難なこととは思いつつ、彼の強い願望をしぶしぶ承諾…。

颯爽と馬車を駆ったものの、

太陽系の軌道を外し、制御不能になった挙句、地球に最接近したため、

地上は灼熱地獄に見舞われます。

この様子を見た神々の長ゼウスは、雷霆をファエトンに投げつけ、馬車を爆破させることによって、地球の危機を救う!

こういった内容を描いた、交響詩です。

私がこれまで聴いていたのは、デュトワ/フィルハーモニア管の演奏のみで、こういった内容を、ほぼ忠実に表現していると思っていました。

宿命的な悲しみをはじめとして…。

ただ、見事な演奏だとは思いつつも、表現が仰々しすぎ、曲想にはふさわしくないような気がしていました。

今回、マゼール/ピッツバーク管のCDを初めて聴いたのですが、前述したような標題性は全く感じられない演奏!

若き主人公フェントンの、天衣無縫なふるまいが、颯爽と瑞々しく表現されており、

心浮き立つような愉悦感に溢れたものでした。

言い換えれば、標題にとらわれることなく、サン=サーンス特有のスポーティーな快感を前面に押し出した演奏と言えるのでしょう。

交響曲第3番をメインに、「ファエトン」「死の舞踏」「バッカナール(「サムソンとダリラ」より)」が収録されているこのCD。

特に、後者の3曲は、それぞれの曲の持つ特性を明確に表現した、「目から鱗…」の思いがする、素晴らしい演奏でした。

ご一聴をお薦めいたします!

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