チェロ協奏曲のみが別格の人気を誇る反面、
後の2曲がコンサートで採り上げられることは、めったにないようです。
ドヴォルザーク35歳の1876年秋に書かれたピアノ協奏曲は、我が家にはこれまで2種類のCDがありましたが、
何度かトレイに載せてはみたものの、地味で聴きどころに乏しく感じられて、最後まで聴き通せた記憶がありません…。
先日、以前から注目していたリヒテルのピアノとC.クライバー/バイエルン国立管のCDを新たに入手、早速聴き始めました…。
冒頭、オーケストラが奏でる憂愁漂う旋律には、爽やかで瑞々しい感性が横溢。
彼の初期の交響曲を髣髴すると同時に、
「もし、クライバーがドヴォルザークの交響曲全曲演奏に取り組んでいたら、人気のない第1〜6番も、もっと高く評価されただろうに…」
冒頭部を聴いた瞬間に、直ちにそんな妄想が拡がりました!
この後、満を持してリヒテルのピアノが登場するのですが…。
意外にも、この名だたる巨匠のピアノが決して主役として登場することはなく、
オーケストラにリリカルな瑞々しさを加えるかのように、脇役に徹して奏でられているように感じられました。
おそらくはクライバーの意図なのでしょうが、この印象は曲の進行とともに確信へと至り、
ボヘミアの瑞々しい自然に浸るかのような感慨を抱きながらに、全3楽章を聴き終えました。
【第1楽章:Allegro agitato】
冒頭のオーケストラが奏でる劇的で憂愁を含んだ旋律の瑞々しさは、爽やかな木管の響き共々、クライバーならではのもの!
ためらいがちに、慎ましやかに登場するピアノには、華やかさはみじんも感じられません。
それどころか、オケの瑞々しさを惹き立てる役割に徹している、
そんな印象を受けつつも、しかし瑞々しい感性が横溢したこの楽章を聴き通しました。
【第2楽章:Andante sostenuto】
ホルンの柔らかな響きがパストラールな雰囲気を醸し、続いてピアノ、そして弦楽器に受け継がれていきます…。
アルペジオで奏でられるピアノ、特に高音部の響きは、月の光のような、星のまたたきのような…。
美しいボヘミアの野の、夜の静けさが伝わってくるようです。
【第3楽章:Allegro con fuoco】
躍動感に溢れつつ、ドヴォルザークらしい心地よい郷愁を伴った舞曲風の終楽章。
ピアノの奏でる装飾音と付点リズムが、陽気さをいや増すよう…。
初めて全曲を聴き通すことによって、なぜピアニストがこの曲を弾きたがらないのかが理解できたように思いましたが、
それにしても、リヒテルとクラーバーがこんなに素晴らしい演奏を残してくれたことには、大いに感謝しなければなりません。
是非、ご一聴ください!