同世代の作曲家グリーグ(1843-1907)と共に、同国国民学派の発展に尽くした功労者と位置付けられる存在。
1863〜67年にライプチヒ音楽院で基礎理論と作曲を学び、メンデルスゾーン風の保守的ロマン主義の薫陶を受けたスヴェンセンの作風は、
抒情小曲集や歌曲に代表される、北欧的な澄んだ美しい響きを持つグリーグのそれとは異なったもの。
交響曲第1番は、彼がライプチヒで学んでいた時代の作品。
初演時にこの曲を聴いたグリーグは、自らの交響曲作曲家としての道を閉ざすとともに、
20歳の頃に書いた交響曲ハ長調に作品番号を付けることを封印したと言われています。
エントリーするのは、M.ヤンソンス指揮するデンマークのオスロ・フィルの演奏。
メルヘンチックな愉しさは、メンデルスゾーン風でもあり、
王宮の華やかな宴を彷彿させつつ、そこに漂う雅さはグリーグ風でもあり…。
折衷的な作風で、インパクトに欠けるようにも思いますが、
逆になじみ易く、聴きやすい作品ともいえるでしょう。
【第1楽章:Molto allegro】
華やかな宴を思わせる冒頭主題から、いきなりメルヘンの世界へと誘われるよう…。クラリネット、次いでオーボエへと引き継がれる哀愁を漂わせた高貴で雅な旋律も印象的です。活発に展開されていきますが、再現部に入る前の黄昏時を思わせる静寂の世界の、美しいこと!
【第2楽章:Andante】
オーロラ輝く夜のしじまを彷彿させるこの楽章は、グリーグと共通した北欧の叙情、
ロマンチックな愛を物語るような、甘く切ない感傷が漂います。
【第3楽章:Allegro scherzando】
民族舞曲を思わせる愉しげなリズムはグリーグのノルウェー舞曲を、
飛び回る妖精を描写したようなような幻想的な雰囲気は、メンデルスゾーンのスケルツォ思い浮かべてしまいます。
トリオ部のないスケルツォ楽章?
【第4楽章:Maestoso−Allegro assai con fuoco】
曲の展開を期待させるような、ミステリアスな雰囲気を湛えた序奏部。愉悦感に溢れた主部は、夢の中の美しい世界に遊ぶよう…。
やがて、星が瞬くロマンチックな世界へと誘われ…。
活気を漲らせて曲は終わります。
曲としてのまとまりや展開に、今一つ物足りなさを感じないわけではありませんが、
ストレスフリーに愉しめる、時折聴きたくなる愛らしい作品だと思いました。