最近聴いたCD

J.S.バッハ:
平均律クラヴィーア曲集 第2巻 1〜8番

ピアノ:スヴャストラフ・リヒテル


軽井沢では雪模様だった元旦を除き、2日から4日までは快晴といってもよい日が続いています。

その代償として、最低気温が−10℃以下の日が続いており、2、3日は最高気温が0℃以下の真冬日…。

昼間の気温が3℃に上昇した今日などは、温かく感じてしまいます…。


そんな心地良さに誘われるように、イタリアの名器と称されるフォツィオーリの音が聴きたくなって、

ヒューイット盤でバッハの平均律第2巻を第1番から聴き始めたのですが…。

音色に堪能しつつも、次第に退屈になってきて、第8番まででストップ。

その腹いせに聴き比べをしょうと、こんどはリヒテル盤を取り出しました。

今やバッハ弾きとして高い評価を得ているヒューイットですが、

今日聴いた範囲では、私にはロマンの雰囲気を色濃く感じられるリヒテル盤の方が、性に合っているようです!


【第1番:ハ長調】

プレリュードが始まった途端、「深いロマンを湛えた、落ち着いて雅な演奏!」を実感。

曲の素晴らしさと同時に、格の違いすら感じてしまった演奏!


【第2番:ハ短調】

これも素晴らしい曲であり、演奏!

目くるめくように動き回るプレリュードには、華やかな喜びが、

遠くから聞こえる鐘の音のように始まるフーガ部は、穏やか且つ崇高な祈りのよう…。

曲が進むにつれ、感興は最高潮に達します。


【第3番:嬰ハ長調】

第1巻第1番を思わせるような、清らかで静謐な流れのような流れが、途中から一転して閃きを得たように表情を変化させるプレリュード。

フーガ部は、次々と閃きが湧き上がるよう…。


【第4番:嬰ハ短調】

打ち震える心を躊躇いがちに告白するような、密やかなレシタチーヴォ風のプレリュード。

目くるめくような力強いフーガには、圧倒されます!


【第5番:ニ長調】

延々と続く饒舌な対話を思わせるプレリュードと、

賢者の対話を思わせる重厚なフーガ。

世俗的と宗教的な対比の妙を感じさせる、素晴らしい演奏です。


【第6番:ニ短調】

迸る激情が目くるめくようなプレリュードが、そのままフーガ部へと受け継がれる趣が…。


【第7番:変ホ長調】

さりげない愛らしさを感じさせるプレリュードと、大げさに振りかぶった思索を思わせるフーガ。

本音と建前の対比を聴くようで、面白く感じられる演奏です。


【第8番:変ニ短調】

仄かな哀愁を湛えながら心地よいテンポで流れる、雅なプレリュード。

フーガは、自問自答するように、或は一つ一つを検証するかのように構築されていく、これぞバッハの神髄と思わせる壮大なフーガです!


リヒテルの演奏からは、それぞれの曲にドラマが内包されていると感じさせ、

聴き手のインスピレーションを刺激してくれるように思えます。

この日は第2巻24曲のうちの第1〜8番を聴いただけですが、

ピアノの旧約聖書と称賛される片鱗が強く実感できた、素晴らしい演奏でした。

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