最近聴いたCD

ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調  

ヴァーツラフ・ノイマン指揮  チェコ・フィルハーモニー管弦楽団


2015年1月2日、雪模様だった元旦とはうって変わって、雲一つない快晴!

昨日積もったばかりの真っ新な雪が、眩しいばかりに光り輝いています。

今年の初聴きは、「こんな晴れやかな日にふさわしい音楽を」と思い、ドヴォルザークの交響曲第8番を、

ボヘミアの自然に包まれるような穏やかな時を求めて、ノイマン/チェコ・フィルの演奏で!


チェコ国民学派を代表する音楽家として、ニューヨークのナショナル音楽院院長として招聘され渡米したドヴォルザークは、

当地に在住する黒人やインディアンの音楽に触れインスパイアされ、

滞在期間中の1892.9〜1895.4の間に、

交響曲第9番「新世界」

弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」

弦楽五重奏曲第3番

チェロ協奏曲といった、

彼の代表作と称賛される作品群を生み出しました。


この交響曲は、彼が渡米以前に書いた作品中、人気の点でそれらと対抗しうる唯一の曲といっても差し支えないでしょう。

とりわけ、第3楽章の哀愁を含んだワルツ風の主題は、文字通り一度聴いたら忘れられないほど印象的なもの。

第4楽章の変奏主題は、昔NHK・FM放送のクラシック番組の冒頭テーマ曲に使われており、

クラシックになじみの薄い方でも、「新世界交響曲」同様に、すんなりと親しめる作品ではないでしょうか。


【第1楽章:Allegro con brio】

密やかなコラール風の序奏に続いて、フルートが奏する第1主題が鳥たちの囀りを、

自然な呼吸で奏でられる、緻密でありながらふくよかなチェコ・フィルの弦楽器の響きが、ボヘミアの草原に吹く風を彷彿させます。


【第2楽章:Adagio】

「草原の憂愁」とでも名付けられそうな、自然の中に佇むような趣を有した、美しくメランコリーな楽章。

遠雷を思わせるティンパニのトレモロが、黄昏時の素朴な牧歌的な情緒を醸します…。

イギリスの画家ジョン・コンスタブルの風景画を髣髴しますが、

そういえばこの曲、以前は「イギリス」と呼ばれていましたね。

その由来は、スコアがイギリスの出版社から出されたからだそうですが…。、


【第3楽章:Allegro grazioso】

ドヴォルザークの交響曲の中で、近年「新世界」の第2楽章に比肩しうるほどに愛聴される、爽やかで美しい哀愁を湛えたワルツ風の第1主題。

ノイマンの演奏は、「爽やかな哀愁を湛えた…」といった趣ですが…。

この演の曲の切ない美しさに涙したい人は、コンスタンチン・シルヴェストリ/ウィーン・フィルの演奏、

とりわけ中間部が終わり、ワルツが回帰するところを!

遅めのテンポで、陽炎のような儚い揺蕩を思わせるセル/クリーヴランドの1970年EMI盤も、味わい深い美しさを有し、お薦めです!


【第4楽章:Allegro ma non troppo】

ボヘミアの愉しい宴の時を思わせる、変奏曲形式の終楽章。

トランペットのファンファーレに続き、チェロが穏やかな主題を提示します。

変奏は力強い歩みに始まり、次第に推進力を高め、テンポを速めて荒々しく盛り上がり、風のそよぎや鳥たちの囀りを思わせるパストラールな雰囲気を経過して、村の祭りの賑わいを思わせる舞曲風の第5変奏に至って、激しく高揚していきます。

一旦静まり、再び主題が提示され変奏していく再現部でのチェコ・フィルの弦の響きには、穏やかでしみじみとした感慨が…。

狂喜乱舞するような愉悦感に溢れたコーダを迎え、華やかに曲は終わります。


音質の点で評判の良くないデジタル初期のCDながら、録音の良さに恵まれたこの演奏を、穏やかな気分で聴き終えることができました。

今年は自然災害のない、その恵みを享受できるような穏やかな年であることを願いつつ…。

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