最近聴いたCD

J.ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調  

W.バックハウス(ピアノ)
カール・シューリヒト指揮  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団


1878年、ブラームスが55歳の春に初めてイタリア旅行に出かけましたが、

その際に、ほぼ20年ぶりにピアノ協奏曲の作曲を思い立ち、スケッチを残しているのですが、

当時は、ヨアヒムが弾いたベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の演奏に感銘!

彼のためにこのジャンルの作品を書きあげることに集中し、ピアノ協奏曲の創作は一旦頓挫しますが、

それから3年後、2回目のイタリア旅行を行った時に、埋もれていた構想が復活、

帰国後に一気に書き上げられたと言われています。

この作品、ブラームスにしては明るい基調で書かれているのは、イタリアという土地の影響なのでしょうか…。


今日エントリーするのは、バックハウスが68歳の1952年に録音されたもので、オーケストラは、シューリヒト指揮するウィーン・フィル。

オーケストラとピアノが互いに寄り添いながら、瑞々しく伸びやかな感性で紡ぎあげられ、

且つ一瞬の弛緩も感じられない、素晴らしい演奏です。


【第1楽章:Allegro non troppo】

冒頭、ホルンの鄙びた響きで奏でられる第1主題は、まさに古き良き時代のウィーン・フィルの響き!

60年以上前のモノラル録音というハンディを超越し、思わず惹き込まれてしまいました。

オケとピアノが紡ぐ音楽は丁々発止というよりも、むしろ淡々とした表現ですが、

ヒューマニティーに富んだ、恰幅の良さが感じられるもの。

実に味わいの深い、名演だと思います!


【第2楽章:Allegro appasionato】

第2楽章のピアノとオケが丁々発止と凌ぎ合うさまが、大海のうねりに飲み込まれるような、振幅の大きな心の葛藤を表現したような演奏が多い中、

この演奏は、可能性と絶望が微妙に交錯するように、内省的で複雑な心模様が表現された、印象的な解釈だと思います!


【第3楽章:Andante】

第1主題を奏でる慈愛に溢れたチェロのしみじみと柔らかな響きに対し、オーボエの鄙びた響きが呼びかける中、

ピアノがそっと忍び寄ってくる部分は、胸がときめくような、いじらしいまでの美しさ!

ソロで奏されるチェロとホルンと木管が密やかに語り合う中、時にオーケストラが情熱を発露させつつ、曲は進行していきます。

シューリヒトの爽やかで瑞々しい解釈と、清水のきらめきを思わせるバックハウスのピアノ(意外でした!)…。

ブラームス作品を聴く喜びが感じられる、最も美しい瞬間の一つです!


【第4楽章:Allegretto grazioso】

シューリヒトのきびきびとした棒さばきによって醸される、春の訪れを思わせるような軽やかさと、そよぐ風に身を任せるような心地良いメランコリー…。

明らかに、今のウィーン・フィルとは異なった、仄かな湿りを感じさせる弦楽器の潤いのある響き!


録音の古さが気にならないと言えば嘘になりますが、

それを補っ余りあるほどに、オーケストラ、指揮者、ピアニストが三位一体となった、見事な演奏だと思います!

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