最近聴いたCD

ブラームス:6つのピアノ小品 op.118

ウィルヘルム・ケンプ


ブラームスの最晩年に書かれた、ピアノ小品集の一つ。

これらの小品のそれぞれには、過ぎ去りし日々を懐かしむように、穏やかな哀愁に満ちた、心に染入るような旋律が収められています。

特に晩秋から初冬にかけてこれらの作品を聴くと、

若かりし日々、とりわけ精神的には自由闊達な生活を送ることができた高校・大学生時代の漠然とした郷愁を、ふと思い起こしてしまいます。

今日エントリーするop.117も、勿論然り!

朝から冷たい雨が降り続き、周囲の木々の葉が紅・黄葉へと粧いを変えていく今日は、

今から61年前の1953年に、W.ケンプがスタジオ録音した演奏で…。

枯淡の境地というよりも、

瑞々しく、時に溢れんばかりの覇気が感じられるゆえに、

古の想い出が生き生きと蘇り、一層郷愁が深まる、

そんな素晴らしい演奏です。


【第1曲:間奏曲 イ短調】

冒頭から、焦がれるような情熱の迸りが感じられる中にも、どこか諦観が漂う、いかにもブラームスらしい佳曲。


【第2曲:間奏曲 イ長調】

風もなく澄み切った秋空のもと、舞い落ちるひとひらの葉を見るような、静かな哀愁が漂う美しい音楽です!


【第3曲:バラード ト短調】

颯爽として力強い表情の中に、懐かしさが漂う主部。

穏やかな中間部には、静かな満足感が漂います。


【第4曲:間奏曲 ヘ短調】

思いが実らぬ切なさを歌うような主部。

心穏やかな中間部を経て、一層思いが激しく募ってくる後半部。


【第5曲:ロマンス ヘ長調】

心が揺蕩うような、甘い曲想を持つ主部。

中間部では、メリーゴーランドで遊ぶような無邪気ささえ感じ、懐かしさがこみ上げてきます。


【第6曲:間奏曲 変ホ長調】

幻想的な雰囲気が漂う主部は、冬の訪れを彷彿させるもの。深い諦観が漂う終曲は、夢のように儚く消えていきます。


聴きこむほどに深い味わいが出てくる、ケンプの真骨頂がうかがい知れる、素晴らしい演奏だと思います。

ホームページへ