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W.A.モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ K.296

I.パールマン(ヴァイオリン)  D.バレンボイム(ピアノ)


1777年、モーツァルト父子は先進地での音楽体験を重ねる旅に出るために、ザルツブルグ宮廷の大司教に長期休暇願を出しましたが認められず、

やむなくモーツァルトだけが辞表を提出し、

母親とともに新しい就職先探しも兼ねて、1年4か月にわたりミュンヘン、マンハイム、パリ(1778年、同行した母親が死去)を訪れます。


マンハイムでは、12年ぶりに(K.55〜61の偽作を除く)、当地で大変に人気のあったジャンルのヴァイオリン・ソナタを5曲(K.296、301〜3、305)書き上げますが、

その内の4曲は2楽章形式で、その後パリで作曲した2曲と合わせて出版。

今日エントリーするK.296だけは3楽章形式からなるもので、

マンハイムで宿舎を提供してくれた宮廷顧問官の娘テレーゼ・ピエロン(15歳:ピアノを教えていた)に献呈するために、パリへと旅立つ3日前に書かれたもの。

他の4曲よりも、ピアノに重点が置かれているように感じられるのは、そういった理由からでしょうか?

のびのびとした親しみ易さとピアノの愛らしい表情が際立った、パールマンのヴァイオリンとバレンボイムのピアノによる、幸福感に溢れる演奏で!


【第1楽章:Allegro vivace】

勢いよく溌剌と開始されますが、ピアノが奏でるコロコロと転がるような旋律の、清らかで爽やかなこと!

心が自ずと和んでくる、魅力あふれるバレンボイムの演奏です。


【第2楽章:Andante sostenuto】

モーツァルトが幼い頃に教えを受けた、J.C.バッハ作曲のアリア「甘いそよ風」を主題とする変奏曲。

主題を奏でるバレンボイムのピアノは、我が子に語りかける母親のように、慈しみに溢れたもの!

途中、僅かに愁いを含んだパールマンのヴァイオリンがピアノに寄り添う部分の、美しいこと!


【第3楽章:Rondou、Allegro】

ピアノが奏する主題に、なぜか懐かしさを覚える終楽章。

ヴァイオリンの柔らかで伸びやかな音色が、ピアノの表情に、より溌剌とした精彩を与える、見事な演奏だと思います。

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