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ヴォーン=ウィリアムズ:交響曲第8番  

サー・エイドリアン・ボールト指揮  ロンドン・フィルハーモニー


ヴォーン=ウィリアムズが80歳の頃(1953年)から作曲を開始、2年余の歳月をかけて書き上げられた作品。

前作の交響曲第7番「南極交響曲」は、R.スコットを隊長とする南極探検隊の活躍を描いた映画「南極のスコット」のための音楽を再構成して作り上げたせいか、

氷山・オーロラ・ブリザード等の描写をはじめ、壮大なロマンを前面に押し出した、スペクタクルな音楽が展開されたのに比べ、

第8番は、使われている楽器こそ多彩ですが、落ち着いた雰囲気を有する、古典的な形式にのっとった作品のようにも感じられるのです…。


エントリーするボールト/ロンドン・フィルの演奏は、シンプルで、明るさの中にしみじみとした深い味わいを有するもの。

【第1楽章:Fantasia(主題を探す変奏曲)】

不思議な副題が付けられた第1楽章。

冒頭部は、朝靄に包まれた静かな田園を思わせる弦楽器の響き、グロッケンシュピールの音色が滴る朝露を、そして浮かび上がる木管やホルンの音色が、牧歌的な情緒を醸します。

ピツィカートで始まる急速な部分は、活気にあふれた人々の営み…。

活気が収まると、私の年代の日本人には懐かしく感じられる、スコットランド民謡風の旋律が登場しますが、これが探されていた主題なのでしょうか?

しみじみとして、感慨深さを覚える部分です。

民謡風主題が提示されると、ヴォーン=ウィリアムズの交響曲でしばしば聴ける、自然(或は古)との対話が始まります。誇り高い大英帝国へのオマージュといった趣が感じられる部分!

最後は冒頭部に回帰して、静かに終了します。


【第2楽章:Scherzo alla marcia】

「行進曲風」と記され、管楽器だけで奏されるこの楽章は、

ミュートを付けたトランペットの響きが、おどけた舞曲を思わせます。

中間部は、穏やかで楽しい寛ぎの情景…。


【第3楽章:Cavatina】

つつましい穏やかさに包まれながら古を回顧する、そんな趣を有するこのカヴァティーナは、弦楽器のみで奏でられていきます。

「タリスの主題による変奏曲」を彷彿させる中間部のヴァイオリン・ソロの美しさは、格別なもの!


【第4楽章:Toccata】

多彩な打楽器が中国情緒を醸し出し、祝典的な盛り上がりを見せる不思議な魅力を有した終楽章。

ヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」と、イメージがダブっているのですが…?


聴くほどに味わいの増す、名曲の名演だと思いました!

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