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ベートーヴェン:「エグモント」序曲  

オイゲン・ヨッフム指揮  バンベルク交響楽団


16世紀のオランダの独立運動に生命を捧げたエグモント伯爵を題材として、ゲーテが書いた同名戯曲のための付随音楽。

【劇の粗筋】スペインの圧政に反旗を翻し、話し合いによる平和的な解決を提唱したエグモントは、捕えられ、死刑を宣告されます。

そのことを知った恋人クレールヒェンは、彼を救おうと懸命な努力をしますが、

力及ばず、自宅で毒をあおって自決!

死刑台に向かうエグモントは、その英雄的行為により自由の女神へと浄化された彼女の幻影を見て、敢然と死を受け容れる…。

祖国愛に根ざした、グモントの高邁不屈の精神力と、

身を挺して彼を支えた、献身的で勇気ある女性像をテーマにした、

いかにもベートーヴェン好みの物語です…。


嘗て所有していたLPで、G.セル指揮するウィーン・フィルの劇付随音楽全9曲を聴いた時には、

「エグモント」序曲の大多数の演奏で聴き取れる、激情と崇高さを対比させたドラマチックな展開とは異なり、

精神の高邁さを淡々と表現した、格調高い曲であり演奏だった、という印象が残っていました。

今日エントリーするE.ヨッフム/バンベルク交響楽団の演奏を聴くと、

LPで全9曲を通して聴いた時の印象が、序曲の中に凝縮されているように思えました。

なお、曲は序奏部・主部・終曲部の3つの部分によって構成されています。


序奏部(Sostenuto ma non troppo)

エグモントの悲劇的な宿命を表すと言われる冒頭の印象的な動機を、感情を極力抑制して美しく響かせるヨッフムの演奏は、

己が運命を穏やかに、恐れることなく力強く受容するような趣が感じられます。


主部(Allegro)

ひたひたとした静かな波が、次第に巨大なうねりへと化していくように高揚する音楽は、

信念を貫き通す二人の殉難を表現しているのでしょうか。

力みかえることなく、高貴で格調高い高揚感をもたらす演奏は、

いつ聴いても静かな感動に包まれていきます!

木管の奏でる情愛に満ちた旋律は、クレールヒェンの純粋な愛!

悲痛な金管の響きを伴って、強く刻まれる主部の終結部は、エグモントの処刑場面を表しているのでしょうか。


終曲部(Allegro con brio)

静まり返った中から力強く湧き上がる、民族の独立を歌い上げた勝利の凱歌!

いつ聴いても、静かな感動と満足感を与えてくれる、演奏だと思います。

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