実際は第1番に先立ち、メンデルスゾーン18歳の時に書かれたもの。
この頃の彼は、ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲の薫陶を受けたと言われていますが、
この曲から、かの作品群のような内省的・実存主義的な深みを見出すことは叶いません。
しかしながら、豊かな音楽的才能と教養を有した青年が、彼なりに偉大な作品を咀嚼した結果、
作品の大部分が短調で書かれ、仄暗い雰囲気を落としつつも、
初々しいパトスが迸った、大変に魅力的な作品に仕上がっています。
【第1楽章:Adagio−Allegro vivace】
アダージョの序奏部は、彼の歌曲op.9-1“Frage(問い)”(「(長い間会えなかった恋人に対し)あなたがいつも蔓棚の傍の木陰で私を待っていてくださったというのは、本当ですか…」)からの旋律が引用されたもの。
愛おしさのこもった表情で開始され、
短調の主部では、それぞれの楽器が迸るような情熱をもって歌い交わされる、いかにもメンデルスゾーンらしい初々しが感じられる佳曲です。
【第2楽章:Adagio non lento】
フレンドリーで親しみ易い主題が奏でられた後、曲はフガート風に進行していく第2楽章ですが、
そうはいっても決して厳格な性格のものではなく、
子供の頃、家族に囲まれた楽しい団欒の中で、明日の予定に胸躍らせた子供の頃を思い出すような、そんな懐かしい感慨を思い出すような曲なのです。
【第3楽章:Allegretto con moto(Intermezzo)】
ピツィカートに乗って、第1ヴァイオリンが穏やかなまどろみの世界を表出します。
中間部は、前年に書かれた「真夏の夜の夢」序曲を思わせる、妖精たちの飛び回る幻想的な世界!
【第4楽章:Presto】
トレモロの伴奏に乗って、第1ヴァイオリンが悲痛なまでに激情的に奏でられる冒頭部は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番の世界?
主部では、若者の初々しい感性と瑞々しい情熱が迸る素晴らしい音楽が展開、
途中現れるフガーと部では、試行錯誤する若者の心の悩みが痛切に伝わってきます。
弱冠18歳の若者の作品ですが、ロマン派音楽の魅力を満喫できる作品であり、演奏!
まだご存じでない方には、是非とも一聴されることをお薦めしたいと思います。