最近聴いたCD

D.ショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」  

ビショコフ指揮  ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団


帝政ロシアでも産業革命が始まりつつあった1905年1月9日、

ロシア正教会の司祭ガボンに率いられた労働者階級が、

時の権力者ニコライ2世に対して「労働者としての権利」を求めるデモを、サンクトペテルブルグの大通りで行った際、

デモを制圧するために皇帝側の警備部隊が発砲し、数千人の死傷者を出した「血の日曜日事件」、

即ち、後にロシア史における「第一次社会主義革命」と位置付けられた事件を扱った交響曲です。

第1楽章から順に、「王宮広場」「1月9日」「永遠の追憶」「警鐘(帝政ロシアへの)」と表題が付けられ、革命歌も引用されているこの作品は、

初演された翌年の1958年に、ソヴィエト当局からレーニン賞を受賞しています…!!


【第1楽章:Adagio(王宮広場)】

靄に包まれた夜明けの王宮広場の静寂…。

遠くに轟くティンパニー、トランペットの奏でる旋律は、戦闘態勢に入った警備隊を表すのでしょうか。

フルート。低弦によって提示される二つの革命歌。

これから起こる惨劇を予兆するような、緊迫感漲る音楽です。


【第2楽章:Allegro-Adagio-Allegro-Adagio(1月9日)】

低弦により蠢くように開始され、次第に力強さをます労働者たちの行進!

突如、エネルギーを全開したしたような突進する音楽は、警備隊の発砲でしょうか!

ここでは、ショスタコーヴィチ作品でしばしば聴かれる、狂気に陶酔する音楽が…。

アダージョ部はレクィエムのように、静謐さの中に祈りが聴こえてきます。


【第3楽章:Adagio(永遠の追憶)】

低弦のピツィカートに導かれて、ヴィオラが奏でる革命歌「同志は倒れぬ」は、レーニンの愛唱歌だったとか。

チューバ等の金管楽器の重々しい響きは、まさに葬送行進曲。

途中からヴァイオリンが清らかに、しかしどこか空疎さを感じさせつつも、高らかな高揚感をもたらします。

最後には、静けさをたなびかせて、終楽章へと突入します。


【第4楽章:Allegro non troppo(警鐘)】

労働者の怒りを表すように革命歌「狂乱した暴君よ!」が力強く提示され、次いで「ワルシャワの労働歌」登場、

圧倒的なクライマックスが築かれていきます。

その後、第1楽章冒頭の朝靄に包まれた王宮広場の緊張感漲る雰囲気が再現、

イングリッシュホルンが悲しげな旋律を奏し、

大太鼓が不気味な蠢きを轟かせる中、チューブラーベルが帝政ロシアの終末を予言するように打ち鳴らされます。


嘗てFM放送で、ムラヴィンスキー/レニングラードの凄絶な演奏に接し、大興奮した記憶があるこの作品ですが、

今日聴いたのは、ビショコフ/ベルリン・フィルの1987年盤。

描写音楽とも思えるこの作品の、各場面が手に取るように表現された、なかなかの秀演と感じました。

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