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W.A.モーツァルト:
弦楽五重奏曲第6番 変ホ長調 K.614  

A.グリューミオ・トリオ他


モーツァルトの死の8か月前に書かれた、最後の弦楽五重奏曲。

この後に書かれた室内楽は、有名なクラリネット五重奏曲一曲だけですが、

1973年にグリューミオを中心としてセッション録音された演奏は、

素朴で鄙びた味わいと、光り輝くような明るく清澄な心境が聴き取れるもの。

第3、4、5番に人気が集中しがちな弦楽五重奏曲ですが、

グリューミオの演奏を聴いてからは、最晩年のモーツァルトが書いた逸品として、この曲をトレイに載せる機会が、がぜん増えてきました。


【第1楽章:Allegro di molto】

春爛漫の中、鳥の囀りを思わせる、一点の曇りもない明るい第1主題。

それを寿ぐような、充足感に溢れた第2主題。

のびのびと開放的な楽章です!


【第2楽章:Andante】

どこか鄙びた雰囲気が漂う、素朴で親しみやすい主題と、変奏。

この曲を聴くと、周囲を田んぼに囲まれて生活していた、幼い頃の日々が懐かしく思い出されます。

刻々と移ろいゆく自然の風景を思わせる、変奏の妙!

この演奏の、最高の聴かせどころと感じます。


【第3楽章:Menuetto(Allegretto)】

鳴き交わす鳥の声を思わせる、明るく伸び伸びとしたメヌエット主題。

トリオ部の緩やかなレントラーは、素朴で美しく、パストラールな情緒が漂う佳曲です!


【第4楽章:Allegro】

快活で愉しげな舞曲風の主題は、第1楽章の鳥の囀りと類似した、明るくきびきびとした音楽。

展開部はフーガ風に処理されますが、

同じく最晩年に書かれたジュピター交響曲や、中期の弦楽四重奏曲第13番の終楽章のフーガ等と比べると、拡がりに欠けるゆえに、

それほど人気がでないのかもしれません…。


でも、前述したごとく、モーツァルト晩年の素朴で澄んだ心境が反映された逸品の一つとして、今後も愛聴していくであろう素晴らしい演奏でした。

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