最近聴いたCD

F.ショパン:ピアノ・ソナタ第3番  

マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)


第2番から5年後の1844年に完成された、楽章間の構成・曲想ともに極めて完成度の高い、ショパン円熟期の傑作!

ショパンの全作品中でも、私の最も好きな1曲です。


若い頃には、触れれば鮮血が迸りそうな、鋭い感性の漲ったアルゲリッチ(1974年盤)の演奏を、

50歳を超えたころからは、静謐で穏やかな、純粋無垢な美しさに溢れたポリーニ(1984年盤)の演奏を好んで聴くようになりました。

今日エントリーするのは、そのポリーニ盤です!


【第1楽章:Allegro maestoso】

冒頭部の第1主題は、いきなり漲る感情をぶつけるように決然と開始されますが、

激情に迸る一歩手前で、感情が抑制されているからでしょうか。

ポリーニの演奏からは、力強くも穏やかな、澄み切った情熱が聴き取れます。

続く第2主題を奏でるピアノの音色は、パールのような柔らかい光沢を湛えたもの。

その音色と絶妙の呼吸感が、純粋無垢で天国的な静謐さ穏やかさをもたらす、まさに神業のような演奏です。


【第2楽章:Scherzo;Molto vivace】

線香花火のように美しく煌めきながらも、実体のない儚さを感じさせるスケルツオ部。

中間部は、束の間の寛ぎのひとときを希求する、ショパンの心情が表現されているのでしょうか!


【第3楽章:Largo】

力強く荘重に開始されますが、すぐに素朴な中にも幸福で雅な佇まいを有する第1主題が、シンコペーションのリズムで噛みしめるように独白されていきます。

この表現は、見事の一言に尽きると思います!

そして中間部の第2主題は、純粋無垢な清らかさに包まれた、夢を見るような世界が…!

ポリーニのショパン演奏の中でも、際立って美しい瞬間が訪れます!


【第4楽章:Presto ma non tanto】

湧き上がるような感動に包まれつつ、曲の展開に伴って精神が高揚していくような、

そんな幸福感を覚える、類稀な演奏!

演奏効果も含めて、ショパン作品の最高傑作。


生涯にわたって聴き続けたい、あらためてそんな感動を覚えたポリーニの演奏でした。

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