ショパンの全作品中でも、私の最も好きな1曲です。
若い頃には、触れれば鮮血が迸りそうな、鋭い感性の漲ったアルゲリッチ(1974年盤)の演奏を、
50歳を超えたころからは、静謐で穏やかな、純粋無垢な美しさに溢れたポリーニ(1984年盤)の演奏を好んで聴くようになりました。
今日エントリーするのは、そのポリーニ盤です!
【第1楽章:Allegro maestoso】
冒頭部の第1主題は、いきなり漲る感情をぶつけるように決然と開始されますが、
激情に迸る一歩手前で、感情が抑制されているからでしょうか。
ポリーニの演奏からは、力強くも穏やかな、澄み切った情熱が聴き取れます。
続く第2主題を奏でるピアノの音色は、パールのような柔らかい光沢を湛えたもの。
その音色と絶妙の呼吸感が、純粋無垢で天国的な静謐さ穏やかさをもたらす、まさに神業のような演奏です。
【第2楽章:Scherzo;Molto vivace】
線香花火のように美しく煌めきながらも、実体のない儚さを感じさせるスケルツオ部。
中間部は、束の間の寛ぎのひとときを希求する、ショパンの心情が表現されているのでしょうか!
【第3楽章:Largo】
力強く荘重に開始されますが、すぐに素朴な中にも幸福で雅な佇まいを有する第1主題が、シンコペーションのリズムで噛みしめるように独白されていきます。
この表現は、見事の一言に尽きると思います!
そして中間部の第2主題は、純粋無垢な清らかさに包まれた、夢を見るような世界が…!
ポリーニのショパン演奏の中でも、際立って美しい瞬間が訪れます!
【第4楽章:Presto ma non tanto】
湧き上がるような感動に包まれつつ、曲の展開に伴って精神が高揚していくような、
そんな幸福感を覚える、類稀な演奏!
演奏効果も含めて、ショパン作品の最高傑作。
生涯にわたって聴き続けたい、あらためてそんな感動を覚えたポリーニの演奏でした。