最近聴いたCD

J.S.バッハ:
無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV1010  

M.マイスキー(チェロ)


軽井沢で、某ボランティア団体の連絡・調整係をやっているのですが、

ここのところ、以前にご利用頂いた団体からの再依頼が連続(いわゆるリピーターですね!)。

長年、サンデー毎日の生活を送っていた私ですが、

暇になったと思って音楽を聴き始めると、電話がかかってきたり、FAXが届いたり…。

こんなに忙しい思いをするのは、軽井沢に来て初めてのことです。

でも、自分達のやってきたことが評価されるって、嬉しいことですよね!

益々、他人様に満足して頂けるよう、「さらに知識を深めると同時に、アウトプット能力も高めねば!」と、やりがいを感じる日々を過ごしています。


今日は朝からバッハの無伴奏チェロ組曲第5番を、マイスキーが1984〜85年にかけて録音した全曲盤から聴きました。

この1週間、ロストロポーヴィッチ、フルニエ(1960年盤)盤を連続して聴いたのですが、

中でも今日のマイスキーの演奏が、最も深く心に浸み入りました!


【第1曲:Prelude】

深々と瞑想的に歌われる、印象的な導入部!

時に溜息をつきながらも、一歩づつ着実に歩むフーガ的な主部からは、伸吟するヒトの声が聞こえてくるよう…。

人間的な感動を呼び覚ます、壮大で素晴らしいプレリュードです!


【第2曲:Allemande】

深い思索を思わせつつ、息つく間もなく連続する荘重なアルマンドのリズムからは、

苦難を易々と乗り越える、力強い情熱すら感じられます。


【第3曲:Courante】

深い思索の中に、鋭い閃きが感じられる演奏!


【第4曲:Sarabande】

簡潔でありながら、底知れぬ深みを感じさせるこのサラバンドは、バッハの最高傑作の一つではないでしょうか!

マイスキーの演奏からは、ヒトの性を思わせるように、永遠に絶えることなく律動を続ける深い悲しみを、

そして、その中に漂う、永遠の美しさを感じるのです。


【第5曲:GavotteT/U】

深い呼吸で繰り広げられる第Tガヴォットと、流麗な第Uガヴォットとの対照の妙!


【第6曲:Gigue】

どこか懐かしさを覚えさせつつも、決然と進行していくマイスキーの演奏。


バッハの無伴奏チェロ組曲には、カザルスの不朽の名盤が存在していることはご承知の通りで、そのことに異存があろうはずもないのですが…

1970年、22歳の頃からの18ヶ月間、ソ連の強制労働収用所での生活を強いられ、

その時に生への一条の光も見えず、死への恐怖を覚えた体験を有するマイスキー!

そんな彼が、1984〜85年にかけて録音した無伴奏チェロ組曲の全曲盤からは、

穏やかさの中にも、沸々と燃え上がるような生への情熱が感じられのです。

中でも第5番の第1曲と第4曲は、この演奏の白眉と申せる素晴らしいもの!

カザルス盤にも匹敵する、必聴に値する名演奏だと思いました。

ホームページへ