第1番ソナタが完成した1902年に着想され、完成したのが1907年と、結構長い時間を要しているのは、
様々な試行錯誤がなされた作品なのでしょう。
スクリャービンが、旅行で黒海を訪れた時の印象に基づいて着想され、
Andante楽章は凪いだ海を、
Presto楽章は嵐の海を象徴すると言われています…。
後年の神秘主義への過渡期的な作品として評価される初期の作品ですが、
後期ロマン派、とりわけショパンの影響が色濃く反映されつつも、
同時代のフランス印象派の作品にも通じる書法が見られ、
スクリャービンのピアノソナタの中では、なじみ易さ故に人気が高いようです。
今日聴いたのは、アシュケナージのスクリャービン・ピアノソナタ全集から…。
【第1楽章:Andante】
嬰ト短調の陰鬱な雰囲気で開始される冒頭部は、死者を悼むかのように打ち鳴らされる鐘の音が響きますが、
長調の第2主題の登場によって、次第に夢見るような憧れを秘めた高貴な明るさに支配されていきます。
展開部から再現部にかけてのアルペジオの響きは、ショパンのような抒情を湛えつつも、
陽の光を映じて光り輝く水面を思わせる、印象派的な趣をも感じさせるもの。
嘗ては大変に感動したこの第1楽章ですが、
今聴くと、少々過剰なサロン音楽のようで違和感を覚えるのは、
曲の性格なのか、演奏によるものなのか、それとも年齢の所為?
【第2楽章:Presto】
嵐の海を象徴するとされるこの楽章ですが、
情熱的で、時に心地好い憧れの表情が聴き取れるのは、疾風怒濤期の青年の感情を表現しているように思えるのです。
嘗てはヴィルトウオーソ的な音楽として好きになれなかったこの楽章ですが、
第1楽章とは逆に、今では味わい深く聴くことができる…。
「音楽の聴き方も変わってくるものだ」
そんなことを痛感した、ひとときでした。