そして第1〜3楽章で激しい不協和音が鳴り響くことから、
戦中及び戦後の混乱が反映された交響曲と伝え聞いていた曲ですが…。
この曲の初演者であるサー・エイドリアン・ボールト指揮するフィルハーモニア管弦楽団の録音(1967年盤)を聴くと、必ずしも現実に否定的なだけの作品とは言えないように思えます…。
【第1楽章:Allegro】
激しい緊張感を漲らせて叩きつけるように提示される第1主題。
ジャズっぽい頽廃的な雰囲気をもつ第2主題は、則を超えないスイングで心地良く展開されていきますが、
仄かな哀愁を湛えつつも、晴朗さが感じられる旋律の登場は、平和な未来への希望の表現なのでしょうか。
「難渋云々…」と言われる世評に背を向け、ひたすら曲に身を委ねていると、実に味わいの深い作品であることが実感できる演奏です!
【第2楽章:Moderate】
地の底から鳴動する、ミステリアスで凍てつくような雰囲気を湛えたバスドラムの連打!
今朝(5月5日)、伊豆大島付近で発生した地震を体験したばかりでしたので、「又か!」と、思わずゾッとしました…。
イングリッシュホルンの寂寥とした響き!
深奥な哲理を髣髴させるような、ヒトの心を根底から揺さぶる辛辣な音楽です。
【第3楽章:Scherzo;Allegro vivace】
チューバの響きで開始されるスケルツォは、酒場やキャバレーでの狂乱・乱舞する音楽…。
中間部は、ミステリアスで混沌とした雰囲気が漂います。
【第4楽章:Epirogue;Moderate】
久遠の彼方から漂ってくるような、宇宙的な響き。
喜怒哀楽全ての感情が麻痺したような、或いは干上がってしまったような…。
しかし、どこかに万物誕生の萌芽を予知させる…。
この終楽章を聴いて、ホルストの「惑星」の終楽章「海王星(神秘主義者)」を髣髴してしまいました。
イギリス音楽の持つ深い味わいを感じさせてくれた、ボールトの名演!
虚心坦懐に耳を傾けて頂きたい、滋味に富んだ演奏でした。