先鋭的な不協和音が随所に配置され、且つ斬新な技巧を駆使した多彩な表現がみられる作品です。
にも拘らず意外に親しみ易く、次々と様々なインスピレーションが惹起されるのは、
全5楽章からなる三部形式の第3楽章中間部を中核として、
同楽章の1、3部、それに第1と第5楽章、第2と4楽章間にシンメトリックな構造を有するように工夫された、その統一感によるものかと感じています…。
荒々しいまでの強烈な推進力を持つ作品であることは事実ですが、
今回は神秘的な雰囲気の中に、静かに燃える情熱に表現の重点が置かれたと感じられる、アルバン・ベルク四重奏団の演奏をエントリーします。
【第1楽章:Allegro】
幽霊でも出てきそうなシャーマン的な雰囲気と、民謡風の激しい舞曲。
マジャールの地に伝わる伝統的な風俗を髣髴させる、印象的な音楽です!
【第2楽章:Prestessimo con sordino】
地獄に吹く風を思わせる心をぞっとさせるような主部は、ミュートを付けたことによる効果なのでしょうか…。
カノン風に書かれた中間部が、切迫感を際立たせます。
【第3楽章:Non troppo lento】
瞑想的な雰囲気に包まれた、高貴で美しい楽章!
チェロからヴィオラへと引き継がれる、魂の慟哭を思わせる旋律の響きは、歴史に秘められた深い悲しみを髣髴!
バルトークの音楽のみから得られる、感動の瞬間です…。
【第4楽章:Allegretto pizzicato】
ピチカートで奏される軽やかな響きは、不思議な諧謔味を帯びたもの。
ハンガリーの民族楽器ツィンバロンの音色も聞こえてくるような、懐かしさが…。
【第5楽章:Allegro molto】
激しく荒々しい民族舞曲を思わせる主部。
曲が鎮まり、シャーマン的な雰囲気を醸す中、強い民族色を帯びたチェロの祈りが響きます…。
深化され、且つ浄化された魂の響きが聞こえてくるような、素晴らしい演奏だと思いました!