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F.ショパン:夜想曲第14番 嬰ヘ短調 op.48-2 

ピアノ:マリオ・ジョア・ピリス


1839年、冬のマヨルカ島での冬期滞在によって体調を悪化させたショパンは、

その年の夏からノアンにあるサンドの別荘で静かながらも創造的な避暑生活を送り、

とりわけ1843年までの期間には、数多くの作品を生み出しました。


今日エントリーする夜想曲第14番は、

ショパンの全作品中でも最高傑作と評価される夜想曲第13番と同年、

31歳の時に作曲され、同時に出版されたもの。

ドラマチックな緊迫感を伴ない、壮大なバラードを思わせる13番と比較すると、

悲しみを淡々と語る趣の14番は、いかにも地味な印象を受け、

決して人気の高い作品ではありません。

しかしピリスの演奏は、刻々と移ろいゆく繊細な心情の変化が肌理細やかに表現されており、

「もしかして、彼女は13番以上にこの曲に共感しているのか!」と思えるほどに、バラード風な展開すら感じられるもの。


短い序奏の後、静かに寂し気に、語りかけるように提示される主題には、ショパンの儚い夢が込められているよう…。

ピリスの演奏は、胸が痛くなるほどに、微妙な心の移ろいが表出されたもの。

一見幸福に見えるサンドとの生活の中にも、健康上の問題も含めたショパンの苦悩が滲み出た音楽です。


中間部では、そんなショパンの不安定な心情があからさまに吐露されたように、ラプソディックな音が展開されます。

そして回帰する主題には千々に乱れる心が表出され、

諦観すらが漂い、最後は消え入るように終わります…。


評判の高いピリスの夜想曲全集ですが、中でも第14番の演奏は、他に比類のない名演だと思います!

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