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バラキレフ:交響曲第1番 ハ長調 

Y.スヴェトラーノフ指揮  フィルハーモニア管弦楽団  


音楽理論やドイツ・ロマン派音楽に大変に精通しており、

反西欧・反プロフェッショナリズム・反アカデミズムを標榜するロシア5人組の指導者として活躍したバラキレフ!

そのためか、寡作かつ遅筆の作曲家で、

27歳の1864年に着想された交響曲第1番も、最初3年間作曲に勤しんだものの一旦放置…。

その後56歳の1893年に再び作曲に取り掛かり、97年に完成に至るという、実に33年もの歳月を要した作品です。

時間を要した割には、「力作」とか「洗練された…」といった評価とは縁遠く思えますが、

国民学派の作曲家らしく、祖国ロシアの民族舞曲や、東方や中近東への憧れに満ちた旋律に加え、

メンデルスゾーン風の幻想的な雰囲気も楽しめる、嗜好の凝らされた(?)曲だと思います。


【第1楽章:Largo−Allegro vivo】

悲しみを押し殺して、しずしずとした歩みを思わせる陰鬱な序奏部(Largo)が、

光が射し、鳥たちの声も聞こえる明るい主部へと親和していくような趣…。

初めて聴いた時には、曖昧で何ら共感を覚えることはなかったのですが、あらためて聴いてみると、なかなかの味わいが感じられる音楽です!


【第2楽章:Vivo−Poco meno mosso】

主部での弦の細やかな動きと、温かく軽やかな旋律は、メンデルスゾーンのスケルツォ楽章の雰囲気を感じ、

温かい部屋で寛ぎながら、外の吹きすさぶ木枯らしを見るような、穏やかな心境に…。

最後は、ロシアンワルツ風に、ゴージャスな響きで終わりますが…。


【第3楽章:Andante】

弦とハープの伴奏に乗って、素朴ながら哀愁と郷愁を帯びた東洋風の旋律が繰り返し繰り返し奏されていくさまは、

時の経つのを忘れてロシアの広大な大地に佇んでいるかのような趣。

ハープのグリッサンドが、静かな余韻を漂わせながら、終曲へ…。

こういう雰囲気の曲、中学生の頃から大好きでした!


【第4楽章:Allegro moderate−Tempo di Polacca】

ロシア民族舞曲風の力強いリズムで開始され、

次いで管楽器によってイスラム風の官能的な雰囲気を湛えた旋律が登場、

これらが激しく入り乱れながら展開され、最高潮に盛り上がっていく終楽章。


いかにもロシアのオーケストラ音楽というこの作品ですが、

スヴェトラーノフ指揮するフィルハーモニア管による演奏は、適度に抑制が効いていて、私には好ましく感じられました。

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