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A.ボロディン:交響曲第2番 ロ短調 

K.ザンデルリンク指揮  ドレスデン国立歌劇場管弦楽団  


未完となったオペラ「イーゴリ公」と同じ年の1869年、ボロディン36歳の時に着手された作品ですが、

化学者としての多忙な研究の合間を縫って、オペラのために準備していた素材を転用することによって、1877年にようやく完成にこぎつけました。

初演は思わしい結果が得られませんでしたが、

その後管弦楽法に手を入れ、2年後にリムスキー=.コルサコフの指揮で演奏されることによって、大きな成功を得たようです。


エントリーするのは、ザンデルリンク/SKDの演奏。

全曲を通して聴くと、構成的にやや希薄な印象を受けるのですが、

彼の解釈は、曲の持つ叙事詩的な性格を描き切ったもので、

そのために、強い説得力を有した演奏に仕上がっているのだと思えます。


【第1楽章:Allegro】

冒頭、勇壮で、しかし科せられた重々しい運命を明示するよう響き渡る低弦のユニゾンと、

郷愁を感じさせるエキゾチックな旋律との対比が、ロマン的な雰囲気を高めていきます。


【第2楽章:Prestissimo】

スケルツォ部のピチカートで浮かび上がるテーマは、砂塵を巻き上げる嵐のよう。

トリオ部は、月明りに照らされるノスタルジックな風景が想起される音楽。


【第3楽章:Andante】

夜想曲を思わせる第3楽章…。

ハープに彩られたオーボエそしてホルンが歌う哀愁を湛えた主部は、さながら吟遊詩人の語りを髣髴させるもの。

中間部の様々な木管の呟きや、詩情豊かに歌われる弦の響きに、静寂は一層深まりつつ…!


【第4楽章:Allegro】

第3楽章の余韻が漂う中、強烈な変拍子を伴なう民族舞曲風の第4楽章へと突入。

オリエンタルムードが漂う旋律に、言いしれぬ郷愁を漂わせつつ、祝典的な華やかさへと高揚していきます。


録音はやや古ぼけた感じで、ドレスデン特有の弦の軽やかな響きが聴き取り辛いのですが、

全曲を弛緩なく集中して聴かせてくれる点で、一聴をお薦めしたい演奏です。

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