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E.エルガー:交響曲第1番 変イ長調 

A.プレヴィン指揮  ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団  


エルガーが50歳になって初めて手掛け、翌年の1908年に完成された交響曲第1番。

ベートーヴェンの偉大な9つの交響曲が世に知られて以降、交響曲とは、技法も含めて芸術家としての全知全能を傾けるべきジャンルと認識されるようになりました。

そのことを意識したブラームスは、交響曲第1番の着想から完成に至るまでに21年を要したと言われます!

エルガーも又、交響曲の作曲には慎重だった上に、

母国イギリスでは、人々が認めるような偉大な交響曲は存在しませんでした。

そのために、「威風堂々第1番」で大きな称賛を得た彼に大きな期待が寄せられていたため、より慎重に…。

50歳を過ぎて、漸く満を持して作曲に着手したと言われています。

初演は大成功だった上に、翌年には年間100回以上演奏されるほどの人気作品に…!


第1楽章冒頭のAndante部には、「高貴且つ素朴に」と記されていますが、

提示される主題は、静かな気品を湛えており、且つ俗事を超越した達観の境地を思わせるもの!

イギリスの人々に歓迎された理由、分かるような気がします。


【第1楽章:Andante・Nobilmente e semplice(高貴且つ素朴に)−Allegro】

前述した主題が提示された後、トゥッティで壮麗に繰り返される序奏部は、まさに「威風堂々第1番」の世界!

20世紀初頭、栄華を極めた誇り高きイギリス人の述懐を聴く、そんな身の引き締まる思いがしました。

主部に登場する不穏な燃えたぎる情熱や、ひとときの孤独な安らぎは、イギリスの歴史を物語っているのでしょうか。

奥深い内容を感じさせる音楽です!


【第2楽章:Allegro molto】

疾風吹き荒ぶ部分と、力強い行進曲風の部分が入り混じった主部。

中間部では、川面に吹く気まぐれな風にノスタルジーを覚えるような、捉えどころのない感慨が湧いてきます。


【第3楽章:Adagio】

前半部は、日常的な夕べへと穏やかに誘われていきますが、

自然に包まれる中、次第に宗教的な法悦へと高まっていく感情!

イギリス音楽の高貴な美しさが実感できる、素晴らしい楽章です。


【第4楽章:Lento−Allegro】

漆黒の闇に蠢くような不穏な空気を漂わせつつ開始されますが、月明りによって次第に全容が見え始めてくるようなLento部…。

激しく戦闘的な主部にも、第1楽章冒頭の主題が形を変えて一抹の安らぎを投げかけ、

希望に向かって次第に高揚していくさまは、まさに「威風堂々第1番」の世界!

私は自制の効いたプレヴィンの演奏によって、初めてこの曲の高雅な美しさと奥深さを味わうことができました。

繰り返し傾聴するに値する、素晴らしい曲であり演奏だと思います。

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