翌年聖ヴォイチェフ教会のオルガニストに就任、乏しいながらも一定の年棒を得ることができ、
更に翌年の1975年2月には、オルガニストとしての年棒の2倍以上のオーストリア政府の奨学金を得ることができ、
漸く安定した生活の目途が立ったとか!
今日エントリーするピアノ三重奏曲第1番は、奨学金取得が決まった直後の、3月から5月半ばにかけて作曲されたもの。
旋律の発展性に欠けるために単調に感じられるのか、演奏されることは極めて稀なようですが、
全4楽章を通して、穏やかな充足感の中にボヘミア情緒が漂う、いかにもドヴォルザークらしい佳曲だと感じます。
【第1楽章:Allegro molto】
冒頭は、穏やかなボヘミアの野の風景を髣髴させるもの。
素朴な主題の断片が繰りかえされるうちに、次第にノスタルジーが高まってきます。
自然への秘めやか愛着が滲み出た、美しく爽やかな音楽!
【第2楽章:Adagio molto e mesto】
寂し気なピアノの歩みで始まり、
心を一つにするようにチェロが、そしてヴァイオリンが、
それぞれの心情を吐露しつつも、寄り添うように展開されていきます。
秘めやかな思いやりが感じられる、純で美しい音楽。
【第3楽章:Allegretto scherzando】
ほんのりとした哀愁を含んだ、チェコの民族舞曲風の主題。
楽しく、夢見るような響きを醸すピアノの音色と、激しく盛り上がっていくポルカのリズムとの対照が印象的です!
【第4楽章:Allegro vivace】
躍動感あふれる、素朴な喜びに溢れた終楽章!
嘗てスーク・トリオの演奏だけで馴染んできたこの曲でしたが、今日聴いたのはトリオ・フォントネのもの。
1980年にハンブルグ音楽大学で結成されたメンバーによる演奏は、若々しく瑞々しさに溢れたもので、この曲の新たな魅力が発見できたように思います。