最近聴いたCD

A.ドヴォルザーク:
ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調 

トリオ・フォントネ


1873年の秋に結婚した当時は、貧困にあえいでいたドヴォルザークでしたが、

翌年聖ヴォイチェフ教会のオルガニストに就任、乏しいながらも一定の年棒を得ることができ、

更に翌年の1975年2月には、オルガニストとしての年棒の2倍以上のオーストリア政府の奨学金を得ることができ、

漸く安定した生活の目途が立ったとか!


今日エントリーするピアノ三重奏曲第1番は、奨学金取得が決まった直後の、3月から5月半ばにかけて作曲されたもの。

旋律の発展性に欠けるために単調に感じられるのか、演奏されることは極めて稀なようですが、

全4楽章を通して、穏やかな充足感の中にボヘミア情緒が漂う、いかにもドヴォルザークらしい佳曲だと感じます。


【第1楽章:Allegro molto】

冒頭は、穏やかなボヘミアの野の風景を髣髴させるもの。

素朴な主題の断片が繰りかえされるうちに、次第にノスタルジーが高まってきます。

自然への秘めやか愛着が滲み出た、美しく爽やかな音楽!


【第2楽章:Adagio molto e mesto】

寂し気なピアノの歩みで始まり、

心を一つにするようにチェロが、そしてヴァイオリンが、

それぞれの心情を吐露しつつも、寄り添うように展開されていきます。

秘めやかな思いやりが感じられる、純で美しい音楽。


【第3楽章:Allegretto scherzando】

ほんのりとした哀愁を含んだ、チェコの民族舞曲風の主題。

楽しく、夢見るような響きを醸すピアノの音色と、激しく盛り上がっていくポルカのリズムとの対照が印象的です!


【第4楽章:Allegro vivace】

躍動感あふれる、素朴な喜びに溢れた終楽章!


嘗てスーク・トリオの演奏だけで馴染んできたこの曲でしたが、今日聴いたのはトリオ・フォントネのもの。

1980年にハンブルグ音楽大学で結成されたメンバーによる演奏は、若々しく瑞々しさに溢れたもので、この曲の新たな魅力が発見できたように思います。

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