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クロード・ドビュッシー:前奏曲集第2巻 

ピアノ:アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ


12曲から構成される前奏曲第1巻が1910年に、同じく第2巻が1913年に完成していますが、

多分に、バッハの「平均律クラヴィーア曲集」や、ショパンの「24の前奏曲」を意識したものと言えそうです…。

ただ、バッハやショパンの作品は、異なった24の調によって構成されていますが、

ドビュッシーの「前奏曲」は、24の調を割り振ったものではなく、

様々な作曲語法の試みがなされた作品集と言えるもの。

尚、手稿譜には、標題は曲ごとの最後のページの片隅に記されているとか。

冒頭に書かれていないということは、あくまでも曲を理解する上での参考程度に記されたもので、

描写音楽と見做され、演奏に際して、ピアニストのインスピレーションが阻害されることを避けたかったため、と考えられています。


私の場合、この「前奏曲集」、

特に第2巻は、曲と標題名とが結びつくほどに親しんでいないものですから、

知らないままに演奏を聴くことによって、何を表現しているのかに想像を巡らせ、

曲が終わった時点で曲名を確認する…。

そうすることによって、(比べること自体、大作曲家や演奏家に失礼と思いつつも)感性の差が明確になるために、曲への理解が深まるように思えるのです…。

そんな風な聴き方で、この名曲を愉しんでいます。


【前奏曲第2巻】
1.霧
2.枯葉
3.ラ・プエルタ・デル・ピノ(葡萄酒の門)
4.妖精たちは得も言われぬ語り手
5.ヒースの荒れ地
6.ラヴィヌ将軍(喜劇役者の踊り)
7.月光の下、謁見のバルコニー
8.オンディーヌ
9.ピクウイック氏讃
10.カノープ(エジプトの土器)
11.交互3度
12.花火


エントリーする演奏は、ミケランジェリが1988年に録音したもの。

今回、ベロフが1970年に録音した演奏と聴き較べたのですが、

ベロフ盤のパステル画のような淡く繊細な趣に対し、

ミケランジェリ盤は、華やかな油彩画のような印象!


私のこれまでの好みから言うと、ベロフ盤なのですが、

今回、敢えてミケランジェリ盤を選んだ理由は、

第12曲「花火」に、格別に感動したからです。

ねずみ花火のようなトリッキーな動き、

眩いばかりにめくるめく、打ち上げ花火のような華麗な色彩の変化、

儚く消えゆきつつ、最後に渾身の輝きを放つ線香花火のような儚さ…

鮮やかなまでのこれらの表現に、ヒトの波乱万丈の生涯を髣髴し、深い感動を覚えました!


他に印象的だった演奏を挙げると、

第1曲の、湧き上がる霧の中、一瞬光が射し込むような鋭い打鍵…

第3曲の、鈍色に光る和音と、地を這うように重々しいハバネラのリズムが醸す、不思議な世界…

第10曲の、アルカイックな様式に漂う、得体のしれない実在感…

繰り返し聴くほどに、味わいの深まる演奏だと感じました。

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